書評

週刊誌は好きになれない人こそ、この小説を読んでほしい

文: 大矢博子 (書評家)

『スクープのたまご』(大崎 梢 著)

『スクープのたまご』(大崎 梢 著)

 だよね、だよね、と頷いてしまう読者は少なくないだろう。なのに彼女は、その週刊誌の編集部に配属されてしまうのだ。うわあ、どうするんだろう……最初の嫌悪感はどこへやら、初手からがっつり日向子を「応援」する気にさせられているのだからたまらない。すっかり著者の術中である。

 次に読者を驚かせるのは、週刊誌編集部の仕事の実態だ。本書を書くにあたって著者が取材したのは「週刊文春」である。もちろん変更や脚色はあるだろうが、編集部の構成や仕事の方法などについては、多くを参考にしていると考えていいだろう。

 どのようにネタを決め、どのように取材し、どのように記事にするのか。その具体的な描写もさることながら、注目すべきは記者たちのスタンスだ。たとえば、取材や執筆を担うのは外部のフリー記者ではなく、ほとんどが社員だという。いい加減な記事を書いたり一発大ネタ狙いの賭けに走って失敗したりしたら、会社員としての将来が閉ざされる。だから必ず裏を取る。真実だと自信のある記事しか載せない。それだけの責任を持って雑誌を作っている、と。

 蒙を啓かれた思いがした。なるほど意外と真面目に作っているのだなと認識を若干改めた。だが日向子も読者も、それで簡単に懐柔されたりはしない。やはり戸惑いと不信は払拭できない。だって悪名高き週刊誌だもの。

スクープのたまご大崎 梢

定価:本体680円+税発売日:2018年09月04日


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