書評

週刊誌は好きになれない人こそ、この小説を読んでほしい

文: 大矢博子 (書評家)

『スクープのたまご』(大崎 梢 著)

『スクープのたまご』(大崎 梢 著)

 それがもうひとつの読みどころだ。日向子は悩み続けるのである。

 主人公が週刊誌の記者ということは、本来なら、いくらでも主人公や他の登場人物の口を借りて週刊誌の正当性を主張させることができるはずだ。週刊誌は素晴らしい仕事なんですよ、といくらでも書こうと思えば書けるはずだ。

 だが大崎梢は、それをしない。その代わり日向子にアイドルのスキャンダルを担当させ「ひとりの女の子が真っ暗な穴の底に転落していく。止めるどころか背中を押すまねをして、いいんですか」と先輩社員に食ってかからせる。取材対象に「人の家の不幸に群がって」「恥ずかしくないんですか」と罵らせ、日向子に「恥ずかしかった」「ずっと思ってる。こんなことをするために大人になったのではない。東京に出てきたのではない」と泣かせる。そんな日向子の逡巡を、葛藤を、闘いを、そしてそんな仕事の中にはからずも時々喜びを見つけ始める様子を、読者の眼前に突きつける。

 大崎梢がそこに込めた思い。それは週刊誌は普通の人が作っている、という当たり前の、けれど忘れがちな事実だ。下衆なハイエナでも斜に構えたアウトローでもなく、普通の人が、ときには悩みながら、ときには泣きながら、ときには自負を持って、ときにはプライドを賭けて、仕事に向き合っている。



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スクープのたまご大崎 梢

定価:本体680円+税発売日:2018年09月04日