- 2018.09.11
- 書評
過剰な責任と違法な脅しで追い詰められる若者たち
文:今野晴貴 (NPO法人POSSE代表)
『西一番街ブラックバイト』(石田衣良 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
アルバイトであるにもかかわらず、過重な責任を負わせること、中心的な戦力として扱っていること、そして、その「責任感」が内面化されていること。この点にブラックバイト問題の震源地があるといってよい。
実は、筆者は本書の作者である石田衣良氏と、単行本の出版を記念して『週刊文春』誌で対談する機会をいただいたのだが、その際に石田氏も「まさに今回、僕が小説で取り上げるきっかけになったのも、親戚の子が学校に行けないという話を聞いたからなんです。スニーカーが好きで、靴の量販店チェーンでアルバイトをしようとしたら、『大学のスケジュールより、アルバイトのシフトを優先しなければうちは採用しない』と言われたらしい」と述べられていた。
次に、(5)~(7)の特徴に示しているように、それだけの責任を押しつけているにもかかわらず、アルバイトの賃金は低く、劣悪な労働条件である。しかも、アルバイトは「学生」、「子供」として扱われがちであるために、法律通りの給与が支払われず、上下関係で支配されてしまう。もちろん、ここで列挙した特徴はすべて違法行為である。
本書で、若者が「おまえは社会人失格だ」「会社に損失を与えている」などと威圧されるシーン。若者の労働相談などに取り組むNPO法人POSSEを運営する筆者は、学生アルバイトをめぐり、こうした違法行為が横行している実態を多く見てきた。この手の威嚇においては、特に高校生の被害がひどく、虐待的なケースも多々ある。
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