2018.09.11 書評

過剰な責任と違法な脅しで追い詰められる若者たち

文: 今野晴貴 (NPO法人POSSE代表)

『西一番街ブラックバイト』(石田衣良 著)

『西一番街ブラックバイト』(石田衣良 著)

 本書のタイトルにある「ブラックバイト」とは、学生生活と両立することができないアルバイトを指す言葉であり、二〇一三年以後、社会に広がった。学生のみならず、アルバイト全体のあり方は近年大きく変貌している。本書に描かれているような、人格を否定するような叱責や退職時の“違約金”請求、それに不本意な退職の強要といった劣悪な対応に若者が追い詰められる事態は、現実にも起こっている。これまでの世代のアルバイト経験からは、なかなか理解されにくい問題なのであるが、近年のアルバイト労働は、これまでとはまったく違う様相を呈しているのだ。

 実際に、この変化を受けて、厚生労働省は二〇一五年に「アルバイトの労働条件を確かめよう!」との啓発活動をはじめた他、全国的な調査も実施した。さらに、同年十二月には、厚労省・文科省が「労働契約の締結の際の労働条件の明示、賃金の適正な支払い、休憩時間の付与などの労働基準関係法令を遵守すること」「学生の本分である学業とアルバイトの適切な両立のためのシフト設定などの課題へ配慮すること」を求める異例の要請文を出すに至っている。



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西一番街ブラックバイト石田衣良

定価:本体650円+税発売日:2018年09月04日