インタビューほか

構想12年の力作、冲方丁長篇ミステリー『十二人の死にたい子どもたち』に込めた想いとは──前編

「別冊文藝春秋」編集部

2019年1月、映画化決定!

『天地明察』や「マルドゥック」シリーズで知られる冲方丁さんの『十二人の死にたい子どもたち』。直木賞候補作にもなったこの作品が、このたび堤幸彦監督により映画化されることになりました。それにあわせて、単行本刊行時のインタビューを前・後編でお届けします。

『十二人の死にたい子どもたち』 (冲方 丁 著)★2018年10月文庫化

冲方 〈自由意思〉によってなされる〈大きな選択〉、それが目的なので、ただ合理的にコトを進めるというのは違う。とはいえ遅かれ早かれコトは成されるはずだったのですが、なぜか全員揃ってみたらそこには予期せぬ闖入者“十三人目”がいた(笑)。しかも、ベッドに横たわった少年はピクリとも動かない。ここで子どもたちははたと気づく。「いま自殺したら、俺達こいつを殺したって思われるよな」と。

──それは困ると言う子、早く実行しようと言う子、それぞれの意見が入り乱れます。そのうち場が白熱し、激しい議論が繰り広げられ……この「舌戦」が実に痛快でした。

冲方 書いているほうも本当に楽しくて。というのは、ひとりひとりの主張というのはそれぞれに切実で、ここに来るまでにどれだけ葛藤があったんだろうと思わせるものばかりなわけです。過酷な状況から一刻も早く逃れたいと思っている子もいるし、自分の尊厳のために死を選ぶという子もいる。同情せずにはいられない一方で、それがどんなに切迫した動機であろうとも、あくまでそれは本人にとっての切迫であるという面もまた見えてくる。

 たとえば“追っかけ”をしていたタレントの死にショックを受けて後追いを考える子の隣に、当のタレント稼業に疲れ果てて死のうとしてる子がいる。対極に位置するふたりがここでは等しく自殺志願者として並んで座っているんです。

──切迫感の方向が真逆なんですね。

冲方 そうなんです。彼らはまるで時計のうえの数字のように、「対(つい)」を成している。でも、その対立は、時計の長針と短針のように刻々と変化していくものでもある。12時と6時が睨み合っていたはずが、気付いたら2時と6時の争いになっていたり。どちらかが正しいという「正解」があるわけではない。

──いわば他者を鏡に、自分を相対化して見ざるを得ないということでしょうか。

冲方 まさにそうです。「え、そんな理由で死にたいの?」と相手に感じたなら、じゃあ自分は? と我が身を顧みることになる。そのうち、いつのまにか客観的に自分のことを見つめることができるようになっていく……。

【次ページ】聴くことがすべての始まり

十二人の死にたい子どもたち冲方 丁

定価:本体780円+税発売日:2018年10月06日


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