インタビューほか

構想12年の力作、冲方丁長篇ミステリー『十二人の死にたい子どもたち』に込めた想いとは──前編

「別冊文藝春秋」編集部

2019年1月、映画化決定!

『天地明察』や「マルドゥック」シリーズで知られる冲方丁さんの『十二人の死にたい子どもたち』。直木賞候補作にもなったこの作品が、このたび堤幸彦監督により映画化されることになりました。それにあわせて、単行本刊行時のインタビューを前・後編でお届けします。

──本作では「話し合い」が繰り返し行われます。

冲方 聴いて、その次に行われるのは何か。それは対話だと思うんですよ。

 十二人の子どもたちは、最初は自分しか見えてない。どこか自己完結してしまっているんだけど、なんとなく自分と違う考え方もあるんだということを感じてはいる。彼らが必死で絞り出した言葉が僕の意図しないところまで拡がっていって、途中からそれぞれの子が勝手に語り出して、止まらなくなった(笑)。

──冲方さんはきわめて禁欲的にそのやりとりを見守っているように感じました。

冲方 子どもって、大人より視野も能力も限られていて、でもその中でなんとか成長していくのがうまいと思うんです。だからここで大人が介在してはいけないと、徹底して大人の視点は排除するようにしました。彼らが話したいことを、好きなように議論させようと。そしたら思いのほかみんな勝手に主導権を握り始めた。こっちのほうがオタオタしちゃうぐらいで(笑)。

 でも、そうやって対話を始めた彼らが、その行為を通して成長していくことは間違いないと思っていたけど、最終的にどんな選択をすることになるかは本当にわからなかった。 もしかしたら、結論を決めることなく小説を書き出せるようになったことも、二十年作家をやってきて手に入れた功績なのかもしれません。

──これまでは違ったんでしょうか。

冲方 僕は本来、完全にプロットを仕上げてから書くタイプで、見切り発車はしない質(たち)だったんですけど、アニメや漫画の仕事ではとりあえず第三話まで書いたら公開なんていうことがしばしばあって。さっき子どもたちの動機が対になっていると言いましたが、そんなふうにキャラクター同士を対にして、ぶつけ合いながら物語を膨らませていくというのは漫画の現場ではよくやる手法なんです。そういう小説以外の仕事の場で学んだことが、小説も進化させてくれたのかもしれません。

 実際、同じ時代を生きる人間、それも十二人の子どもを全員ちゃんと書き分けられるのかとか、会話中心のスタイルで読者を飽きさせずに展開していけるのかとか、不安はたくさんあったんです。それを、ほぼ会話のみで進んでいくゲームのシナリオとか、ものすごく尺(長さ)の制限が厳しいアニメの脚本とか、登場人物がやたら出てくる「マルドゥック」シリーズとか(笑)、それぞれの媒体や作品でありとあらゆる試行錯誤をしてきたことが効いて、書き上げることができた。実はこの作品内でも十二人の書き分けが冒頭とラストでは全然違うものになっていて、この作品にまた一段、僕の筆力をあげてもらったと思っています。>>後編へつづく

 

十二人の死にたい子どもたち冲方 丁

定価:本体780円+税発売日:2018年10月06日


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