インタビューほか

構想12年の力作、冲方丁長篇ミステリー『十二人の死にたい子どもたち』に込めた想いとは──前編

「別冊文藝春秋」編集部

2019年1月、映画化決定!

『天地明察』や「マルドゥック」シリーズで知られる冲方丁さんの『十二人の死にたい子どもたち』。直木賞候補作にもなったこの作品が、このたび堤幸彦監督により映画化されることになりました。それにあわせて、単行本刊行時のインタビューを前・後編でお届けします。

『十二人の死にたい子どもたち』 (冲方 丁 著)★2018年10月文庫化

聴くことがすべての始まり

冲方 実はこれ、そのまんま僕の少年時代の体験がもとになっています。僕は四歳から十四歳まで海外で育ちました。最初がシンガポールで、次がネパールです。しかもインターナショナルスクールに通っていたので、僕だけが異質というのでもなく、クラスメイト全員属性がバラバラで、まるで毎日がサミット。

 統一ルールで運営されている集団ならそれに則ればいいわけで、話は簡単です。でも、全員信じる神様が違うような状況だと、相手のコードが読み取れないところから対話を始めなければならない。そうやって自分から踏み込まないと、ランチを一緒に食べる相手すら作れないですから。

 そういう集団で生活していると徐々に、価値観は共有できなくても、共存はできるんだと気づく。たとえばイスラム教徒のクラスメイトは、ラマダーンの時期になると体育の時間にマラソンしてても水はもちろん、唾すら飲み込まない。走り終えて喘ぐように倒れているのを見ると、「なんでそこまで?」と思う。すごい精神力だと感心はするけど、それって何のためなの、と正直思うわけです。でもそのうち、相手が信じているものへの興味とか敬意が湧いてくるんです。

 同一価値観の集団内の「常識」とはまた別の価値観があるんだということを認識していく。そうやって違いを知ると、今度は相手の言葉を聴くようになる。僕は何より、聴くことがすべての始まりだと思っていて、今回もずっとそれを意識しながら書いていました。

十二人の死にたい子どもたち冲方 丁

定価:本体780円+税発売日:2018年10月06日


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