- 2018.11.07
- インタビュー・対談
<柴田よしきインタビュー> 高原で探し物は見つかるのか?
「オール讀物」編集部
『草原のコック・オー・ヴァン 高原カフェ日誌II』
出典 : #オール讀物
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
東京の出版社を辞め、百合が原高原にカフェを開業した主人公の奈穂。過去にトラウマを抱えながらも、地元の人々や食材に助けられ、小さな奇跡を起こしていく連作『風のベーコンサンド 高原カフェ日誌』は、文庫化され版を重ねている。それに続く本書『草原のコック・オー・ヴァン』は、奈穂が百合が原で二度目の厳しい冬を迎えるところからはじまる。
「タイトルのコック・オー・ヴァンは、鶏肉の赤ワイン煮込みのこと。作り方も簡単な家庭料理で、フランスでは〈おふくろの味〉ですね」
奈穂もこの料理を店のメニューに採り入れられるか、様々な調理法を試す。一方、亡き祖母のレシピとして、また別のコック・オー・ヴァンの味を探し求めているのが、都会からワインを造るために、新たに百合が原へやってきた青年・森野大地だ。
「ワインというのは、もともとお洒落で華やかなイメージだったと思います。ところが、現在の日本は第七次ワインブームだそうで、家庭の食卓や居酒屋の品書きにもワインが載るようになってきたし、国産の造り手も非常にがんばっていますよね。ワインというものは、地元の空気、水がそのまま影響して出来上がるもの。自然が相手なだけにいろいろと難しく、挫折も多いようですが、都会を捨てて高原で生きていこうとする、奈穂や大地の姿に、そのイメージが重なりました」
以前はワインがあまり得意ではなかったという著者の柴田さん。「執筆中に徐々に慣れてグラス一、二杯は美味しく飲めるようになりました(笑)」というが、物語の中で土地の新参者のふたりは百合が原にすんなりとは馴染めない。奈穂の恋人・涼介との関係、大地が元人気ロックバンドのギタリストだったという過去に、周囲は無神経に踏み込んできてしまう。
「最初はもの珍しさで親切にしてくれたとしても、発展もしなければ、変化も望まない地域では、意地の悪い人も出てくるし、男尊女卑も根強いでしょう。そこに根を生やして生きていくのは相当な覚悟がいりますね」
奈穂は未来に向けてどのように決断をし、大地はどう過去と決着をつけるのか――奈穂の供する美味しい料理、大地が理想とするワインが、道標となってストーリーは前に進む。
「料理は好きなので書いていて楽しかったですけれど、お腹が空いてつい何か食べたくなるのは困りました。男女や年齢に関係なく、料理というのは日常の作業。本の中に出てくる料理を『美味しそう』だけでなく、『作ってみたい』と思ってもらえたら嬉しいです」
しばたよしき 一九九五年「RIKO-女神の永遠」で横溝正史賞を受賞してデビュー。花咲慎一郎シリーズ、猫探偵正太郎シリーズ、長編『激流』、アンソロジー『捨てる』ほか著書多数。
こちらのインタビューが掲載されているオール讀物 11月号
2018年11月号 / 10月22日発売 / 定価980円(本体907円)
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