- 2018.04.13
- 書評
野球を通して描かれる女性たちのドラマ。 不覚にも涙してしまった「輝き」の季節。
文:和田 豊 (阪神タイガース・球団本部付テクニカルアドバイザー)
『輝跡』(柴田よしき 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
柴田よしきさんに初めてお目にかかったのは、二〇一三年二月、私が監督として二年目の沖縄キャンプの時だった。キャンプは中盤に入り、紅白戦が始まる頃、知人が沖縄を訪れていた柴田さんを紹介してくれたのだ。
ヤクルトスワローズファンを公言しておられ、タイガースからスワローズに移籍した選手を気に入っていると話す柴田さんは、饒舌で快活な方で、私がそれまで想像していた作家というイメージとはまるで違っていた。そしてとにかく野球に詳しく、またプロ野球界の裏も表もよくご存じで、なるほど、これだけ精通されておられるからできたこの一冊なのだ、と当時の私は納得したことを思い出す。チームの練習が実戦モードになり、少し気合いが入り過ぎるようなその頃、全く違う世界で活躍する柴田さんとの出会いと、自分に身近な事が小説になっていることが素直に嬉しかった。
輝跡。この解説の話を頂いて読み返した。読み終えた時に、改めて私の輝跡は一体いつだったのだろうと考えた。私はプロ野球界で選手十七年、コーチ十年、監督として四年間在籍した。現役選手としてのピークだった頃、チームは弱かった。優勝争いは、九〇年代には一度しかなかった。今のようにクライマックスシリーズもなかったので、夏を過ぎるとスタンドは観客もまばらな状態だった。それでもチームを引っ張り続けたあの時代、その頃だったのかもしれない、私の輝跡は。
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