
桃山時代、二代にわたる天下人の間近に仕え、名だたる武将たちと交流し、今日まで伝わるわび茶という総合芸術を確立した千利休。政治が芸術へ、芸術が政治へと深く浸食しあった後、大量の血を流して再び分離していくさまは、戦国時代を舞台とするフィクションのつくり手で、一度はテーマにと考えたことのない者はいないだろう。だが実際のところ、千利休とその茶の実像を描こうと試みた小説やコミック、映画は、思いのほか少ない。利休の茶の本質をいかに描くべきか、何よりそこが難物であるからだ。
本作では利休自身がその考えを明らかにすることはついになく、牧村兵部(利貞)、瀬田掃部(正忠)、古田織部(重然)、細川三斎(忠興)ら利休七哲に数えられる高弟たちが順に語り手となり、それぞれの立場から目撃した利休、そして豊臣秀吉の、政治と芸術における相剋が、連作形式で語られる。たとえるなら、ひとつの主題に基づいて変奏が繰り返されていく、長大な変奏曲のような物語だ。
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