『君がいない夜のごはん』(穂村 弘 著)

 余談ですが、思い返してみて私が個人的に恥ずかしかったのは、家族でピザハットに行ったとき、祖父が「餃子!」と大声で注文したことくらいでしょうか。こういうのは穂村さん、恥ずかしがらないんだろうなあ。

 ウニと言えない人は、自分の欲望のありかがバレるのがいやなのでしょうか? 無防備な自分を見られることを恐れているのか。弱みを握られたくない? プライドが高い男子なのでしょうね。でも「ウニが欲しいことは黙っとく」ことで守られるプライドって、なんだ?

 この『世界音痴』の本のカバー、回転寿司を凝視する穂村さんの写真は、「回転よ、止まれ!」と念じていると聞きました。へんな人。

 ただ確かに、食べものを前にしたときの人間って無防備ですよね。

 たとえばテレビ番組で出演者が試食をするとき、いつも以上に注目してしまうのは、単に私が同じ業種だから、というだけではないような気がします。

 食べる行為は、人間がよりくっきり映し出される。そこが好きなんです。