いっしょに食べれば食べるほど人柄がわかります。この本の魅力は、読者が穂村さんといっしょに食事をしたり、ごはんやおやつ談義をしている、コーラやジュースの思い出話をしてる、そんな気にさせてくれるところにあります。
本書には著者と誰かのやりとり、食を巡るコミュニケーションの愉しいさまが溢れ返っています。みんなそれぞれ育ってきた環境、年齢がちがうのですから、お互い「えっ?」って思うことはたくさんある。穂村さんの短歌論的にいえば、共感も驚きもいっぱい用意されているのです。
お好み焼きのタネはもっと混ぜるものだった。
牛乳はコップで飲まないとおいしくない。
目玉焼きにポン酢。
チェルシーはヨーグルト味がいちばんださい。
御飯かルウのどっちかが冷たいカレーが好き。
……等々。穂村さんの発見や、思い込み、反省はいちいち角度が急で、極端です。読むうちに、常識と非常識が入れ替わってくる。
ベッドで菓子パン?
お皿は裏は洗わない?
徳島では亡くなったひとのお骨を遺族が食べる?
店長がひとつひとつ丁寧に口に入れてはまた出したパンでございます?
穂村さんの脳内の(逆ソムリエの)声も響いてきて、あれ? これでいいんだっけ、こっちが普通なんだっけ? そもそも普通ってなんだっけ? なんて、感覚が次第に麻痺してくるのがわかります。
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