
- 2019.03.08
- インタビュー・対談
【対談】やっぱり「不倫」は文化だ! 女の不倫は欲のため、男の不倫は見栄のため
柴門ふみ ,林真理子
『下衆の極み』(林真理子 著)
ジャンル :
#随筆・コミックエッセイ
柴門 時代や生まれ育った環境もありますよ。私は生まれが徳島で、昔はまだ近所にお妾さんと呼ばれる人がいました。昭和の時代はまだお妾さんというものは、そんな悪いことじゃないみたいという下地がありましたね。
林 そうそう。日本はもともと浮気についておおらかだったでしょう。『源氏物語』が書かれた平安時代の頃は、正妻以外にも女性は何人も持てましたよね。
柴門 でも、一夫多妻が認められていても、六条御息所は嫉妬のあまり生霊になってしまいましたよね。そういう意味では現在の一夫一妻制は、とりあえず正妻が一番偉くて、残りは全部ルール違反という決まりで、すごくわかりやすい。
林 そうね。フェミニストの中には、明治に入ってから出来た戸籍制度が女性を縛っているんだって言う人もいるけど、婚姻制度がなかったら、男女はグチャグチャになっちゃう。
柴門 うん。そのひとつの典型が『美は乱調にあり』(瀬戸内寂聴原作)で描いた、大杉栄と三人の女だと思う。アナーキストの大杉栄は、男も女も経済的に自立して自由にセックスする「フリーラブ」という男女のありかたを提唱して、大杉栄と伊藤野枝、神近市子、妻の保子という一対三のフリーラブを始めるわけですよ。ところがうまくいくはずはなくて、大杉は経済的には神近に頼りきりになり、女性としては最初から伊藤野枝が大好きで、妻とはやむなく離婚できずにいただけ。四人の関係はあっという間に破たんして、大杉栄は神近市子に刺されちゃうわけです。平塚らいてうが「誰かを傷つけるようなこの恋愛がこの先うまくいくとはとても思いませんでした」と書いてますけどね。