書評

17歳のときにこの小説に出会っていたら……5人の少女たちへの願いとエール

文: 枝 優花 (映画監督)

『17歳のうた』(坂井希久子 著)

『17歳のうた』(坂井希久子 著)

 We are the Champions

 

 とんでもない話だ。繊細な描写ゆえに、ハードな現実が鮮烈に脳内を駆け巡り、あっという間に読み終えてしまった。小さな小さなコミュニティの中で生きている17歳のプライドや建前がぐるぐると追いかけっこをしているようで、ずっと苦しい。そして無視できないのは主人公マリエの恋人・タカヒロの着信音「We are the Champions」。クイーンの名曲であり、フレディが永遠に「私たちは王者だ」と歌い続けるのだが、この歌の序盤はこうだ。

 

 Iʼve paid my dues

 ツケは支払った

 

 Time after time

 何度も

 

 Iʼve done my sentence

 きっちり贖罪してやった

 

 But committed no crime

 だが何か罪を犯したって訳じゃない

 

 And bad mistakes

 確かに悪い事をした時はある

 

 Iʼve made a few

 何度かね

 

 Iʼve had my share of sand kicked in my face

 顔に砂をぶっかけられるような思いも味わった

作詞・作曲 フレディ・マーキュリー

 

 ……つまり、これから始まる悲劇がタカヒロの着信音全てに詰まっている。事の発端であり元凶でもあるタカヒロのものだから面白い。さらに追い討ちをかけるようにマサぽん先輩(微塵も頼りにならない男)も同じ着信音。この辺りから、坂井さんの心の声が聞こえる。男っていうのはいつでも無責任で自由でこちらの気も知らずに生きているのだと。タカヒロが自分は王者だと歌っている間に、マリエは想定外の事態に巻き込まれ、皮肉にも強くなっていく。

17歳のうた坂井希久子

定価:本体750円+税発売日:2019年05月09日


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