- 2019.05.31
- 書評
17歳のときにこの小説に出会っていたら……5人の少女たちへの願いとエール
文:枝 優花 (映画監督)
『17歳のうた』(坂井希久子 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
We are the Champions
とんでもない話だ。繊細な描写ゆえに、ハードな現実が鮮烈に脳内を駆け巡り、あっという間に読み終えてしまった。小さな小さなコミュニティの中で生きている17歳のプライドや建前がぐるぐると追いかけっこをしているようで、ずっと苦しい。そして無視できないのは主人公マリエの恋人・タカヒロの着信音「We are the Champions」。クイーンの名曲であり、フレディが永遠に「私たちは王者だ」と歌い続けるのだが、この歌の序盤はこうだ。
Iʼve paid my dues
ツケは支払った
Time after time
何度も
Iʼve done my sentence
きっちり贖罪してやった
But committed no crime
だが何か罪を犯したって訳じゃない
And bad mistakes
確かに悪い事をした時はある
Iʼve made a few
何度かね
Iʼve had my share of sand kicked in my face
顔に砂をぶっかけられるような思いも味わった
作詞・作曲 フレディ・マーキュリー
……つまり、これから始まる悲劇がタカヒロの着信音全てに詰まっている。事の発端であり元凶でもあるタカヒロのものだから面白い。さらに追い討ちをかけるようにマサぽん先輩(微塵も頼りにならない男)も同じ着信音。この辺りから、坂井さんの心の声が聞こえる。男っていうのはいつでも無責任で自由でこちらの気も知らずに生きているのだと。タカヒロが自分は王者だと歌っている間に、マリエは想定外の事態に巻き込まれ、皮肉にも強くなっていく。
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