- 2019.05.31
- 書評
17歳のときにこの小説に出会っていたら……5人の少女たちへの願いとエール
文:枝 優花 (映画監督)
『17歳のうた』(坂井希久子 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
……とこれを書きながら気付いたのだが、やはり私は25年間で経験し感じてきたことを通してしか彼女たちを見ることができない。17歳の頃の気持ちに戻って、なるべく寄り添いながら一緒に「その気持ちわかる~」とハイタッチしたかったが、できない。もう8年も経ってしまったし、彼女たちの苛立ちや不安を、青いし懐かしいと思ってしまう。感情の冷凍保存ができたら一番楽なのに、残念ながら人は昨日の夕飯ですら忘れてしまうわけで。最近までそういう自分が酷く嫌いだった。大人になってしまったことが過去への冒瀆に思えた。でも本作を読んで思った。それは違うや。私たちは今を生きているわけだし、後ろばかりを見ていられない。前を見続けていれば必ず変化が伴う。ずっと昔のまま同じなんて、今を生きている意味がないじゃないか。5人の彼女たちにそれぞれ願いやエールを送ったけど、きっとこれから彼女たちはまた壁にぶち当たる。それに、全然正解にたどり着けないかもしれない。まあそもそもエールを送る、なんて言う時点で何様なのって感じだけど。私も現在進行形で自分にエールを送り続けて生きているのだ。大人になるって言うからちょっと嫌な気持ちになるけど、大人なんて幻想だ。前に進むには時間が必要で、それが結果的に歳をとることなだけ。だから、大人と子供の境界線なんて存在しないのだ。前に進み続けていたら、きっとこれからもっとスペシャルな人生が待ってる。たまに立ち止まって「今生きてるなあ」と思えたら、これが大人になったってことなのかな。いや、わからないね。でも私は今生きてるし、それでいっか。
-
『赤毛のアン論』松本侑子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/20~2024/11/28 賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。