『17歳のうた』(坂井希久子 著)

 腹いせに蒔いた種が、自分で収拾しきれないくらい渦になり広がっていく。「こんなはずじゃなかったのに」なんてことは、10代の頃にはよくある。周りが雰囲気に乗っていくことで、大事なことは薄れ、外側だけが大きくなり、最後は誰も止められない。そんな状況に、マリエは腹をくくり向き合う。そんな彼女が自分に勝っていくまでの瞬間を、鮮烈に描いている。実は「We are the Champions」の歌詞には続きがある。「必要なのは自分を信じて突き進む事。自分を信じられるかどうかだ」。この歌はマリエのための歌だったのだろう。自分を信じて突き進んでは傷つき、苦しんで、もがく。それを繰り返して、きっとマリエもいつか「お母さんの気持ちがわかる」なんて言う日が来るのかな、と勝手に妄想する。

 

 Changes

 

 神という大きな視点から「固定観念を打ちくだけ」というメッセージを訴えてくれているように感じた。それは度々現れるフクロウの存在や、兄の言葉、そしてデヴィッド・ボウイの「Changes」など随所に見られる。

「神は死んだ」と言い残し、失踪した千夏の兄。結局は失恋が原因だったわけだが、元はと言えば、これはドイツの哲学者のフリードリヒ・ニーチェによる言葉だ。

 

 Gott ist tot! Gott bleibt tot! Und wir haben ihn getötet.

 神は死んだ。神は死んだままだ。そしてわたしたちが神を殺したのだ。

著書「Die fröhliche Wissenschaft」より