- 2019.08.27
- 書評
すべては40年前のアメリカ留学から始まった。総理と夫人と、学園経営者の奇妙な関係。
文:石井妙子 (ノンフィクション作家)
『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』(森功 著)
私は、かつて安倍昭恵首相夫人を取材し、「安倍昭恵『家庭内野党』の真実」という記事を書いた(『文藝春秋』二〇一七年三月号)。
当時、原発の再稼働に反対するなど、夫とは真逆の意見を口にする首相夫人を一部のメディアは、「家庭内野党」、「物言うファーストレディ」と誉めそやしていた。
だが、そのような見方は正しいのか。
むしろ彼女は価値観の根底を夫としっかりと共有しており、同志的に連帯している。夫とは常に補完関係にあり、だからこそ政権も夫人に五人もの秘書をつけて、公人と変わらぬ振る舞いを許しているのではないか、と私は書いた。
すると記事の発表直後、森友問題、続いて加計問題が起こった。私は自分が昭恵夫人を取材していたという経緯もあって、この問題に強く惹(ひ)かれた。
なぜ、どうして、このような問題が起こったのか。事件の全体像や本質を知りたいと思ったのだ。ところが次第に国会での野党の追及や、メディアの報道は、誰が、いつ、どのような忖度をしたのかという一点に傾いて隘路(あいろ)に陥り、私の疑問はそのまま胸に残って解消されなかった。
だからこそ、二〇一七年十二月に本書が単行本として刊行されると、すぐさま読んだ。そして、ようやく答えを得られたと感じた。
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