書評

すべては40年前のアメリカ留学から始まった。総理と夫人と、学園経営者の奇妙な関係。

文: 石井妙子 (ノンフィクション作家)

『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』(森功 著)

『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』(森功 著)

 同窓の先輩である作家、曽野綾子のアフリカにおけるボランティア活動に同行して感激した夫人は、自分も同じようなことをしたいと考え、夫の勧めもあってミャンマーを選んだという。そして、二〇〇六年から毎年、まだ軍事政権下にあった同国を足しげく訪問。夫人は「ミャンマーに貧しい子どもたちのための寺子屋を作りたい」と考えるようになるが、その夢は加計理事長の支援により、あっさりと実現する。

 その後、二〇一一年にミャンマーが民主化され、二〇一二年に第二次安倍政権が誕生すると半年後、安倍首相は財界人約四十人を連れてトップセールスに赴くのだが、その政府専用機には加計理事長も同乗していたと本書は明かす。

 こうした流れの中で、加計学園は他の学校法人に先駆けてミャンマー支局を設立。ミャンマー人を加計学園傘下の学校に留学生として送り込む窓口を得るのである。

 一見、昭恵夫人の突拍子もない我がままに加計が協力し、その見返りを安倍首相が与えたように映るが、逆に、安倍首相が自分の立場では赴けない軍事政権下のミャンマーに先遣(せんけん)として夫人と加計を送り込み、人脈の下地づくりをさせたようにも受け取れる。本書を読み、考えさせられた部分だった。

悪だくみ森功

定価:本体750円+税発売日:2019年06月06日


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