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すべては40年前のアメリカ留学から始まった。総理と夫人と、学園経営者の奇妙な関係。

すべては40年前のアメリカ留学から始まった。総理と夫人と、学園経営者の奇妙な関係。

文:石井妙子 (ノンフィクション作家)

『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』(森功 著)

出典 : #文春文庫
ジャンル : #ノンフィクション

『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』(森功 著)

 にもかかわらず、その固く開かぬはずの門が、加計学園にだけ開かれていく。愛媛県今治市が「国家戦略特区」に指定され、特区事業として獣医学部の新設が認められて、しかも、加計学園の申請だけが通るのである。特例中の特例であり、「総理のご意向」が働いた結果ではないか、と多くの人が疑念を持つのは至極、当然なことであった。

 

 森友問題も、加計問題も、ともに学園を舞台にしている。

 安倍政権下の教育行政では、教育も市場経済に任せればいいという新自由主義的な考えと、復古的なナショナリズムが同時に台頭した。加計問題は前者から、森友問題は後者の流れから生まれたと見ていいだろう。本書では、「森友は、第二の加計学園」であると強調されているが、これは重要な指摘だ。世間では問題発覚の順番から「加計は、第二の森友学園」と誤解されている向きがあるが、それは違う。

 昭恵夫人は、森友学園の籠池理事長夫妻と知り合い、教育勅語を朗読させる教育理念に共感した。だからこそ、同学園が新設するという小学校の名誉校長になることも躊躇(ちゅうちょ)せずに引き受けたのである。籠池理事長夫妻から、「国有地の払い下げがなかなか進まない」「認可が下りない」という悩みを聞かされれば、その都度、力を貸しもした。

 脇の甘い、お人よしの首相夫人がアクの強い理事長夫妻にわけもわからず搦め取られた、と説明する報道が多かったが、そのような見方は間違っていると思う。

文春文庫
悪だくみ
「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞
森功

定価:825円(税込)発売日:2019年06月06日

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