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すべては40年前のアメリカ留学から始まった。総理と夫人と、学園経営者の奇妙な関係。

すべては40年前のアメリカ留学から始まった。総理と夫人と、学園経営者の奇妙な関係。

文:石井妙子 (ノンフィクション作家)

『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』(森功 著)

出典 : #文春文庫
ジャンル : #ノンフィクション

『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』(森功 著)

 翻って今の日本では、おいそれとダムや原発は新設できない。だが、二〇〇〇年以降、「教育の自由化」の御旗のもと、新しい形の公共事業が生まれたのではないだろうか。

 もちろん、かつての建設事業と教育事業では違いもあり、昔のような現金の授受は今のところ見つかってはいない。ただ、普通の教育者では得られない、特別な「便宜」が図られたことは、どう考えても確かであろう。教育事業を行おうとする一個人が、たまたま時の権力者と近いというだけの理由で。首相夫妻、あるいはその取り巻きと親しく、インナー・サークルを作っている人たちだけが、国から優遇され、教育に乗り出せるとすれば、それは「公教育」を私的な事業に変質させてしまう。校舎の建設用地も、建設費も、そして私学助成金も、公共の名の下に負担しているのは国民であるのに。

「教育の自由化」や特区という変革を悪用して、私的な関連性を公の場に組み込ませていく。首相を中心として、べったりとした気味の悪い共同体が作られ、国家も行政も私物化されていく。首相が露骨に「お友達」を優遇するのを見て、政治家も官僚も民間人も恭順の意を示すようになる。その過程と構図を本書は、見事に暴いている。

 加計学園問題の本質を知りたいと思う読者だけでなく、平成の末期、日本に何が起こったか。終わりの始まりを知りたいと思う人々によって、本書は後々まで読み継がれていくであろう。

悪だくみ
「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞
森功

定価:825円(税込)発売日:2019年06月06日

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