この解説を書くために、あらためて読み直しましたが、いい小説だと思います。じつは何度も泣きました。女の子たちがけなげで。ああもう、この子たち、こんなにいっしょうけんめいで、がんばってて、えらいよね、と思うと泣けてくるのです。
明治、鹿鳴館(ろくめいかん)の時代。
舞台は高等師範学校女子部。お茶の水女子大の前身です。物語は、この「女高師」の講堂で開催される舞踏会で幕を開けます。当時の文部大臣、森有礼(もりありのり)の肝入りで開かれるこのダンスパーティーは、しかし校庭の藤棚で爆弾が炸裂するという不穏な事件に見舞われ、読む者をいきなりサスペンスの現場へと引きずっていくことになります。
乙女と爆弾。
ものすごい組み合わせです。
この小説には二つの大きなラインがあり、一本が「女高師」を舞台にした、生徒の野原咲と駒井夏を中心とした青春ミステリー、もう一つは、久蔵と名乗るエキゾチックな顔立ちの俥夫(しゃふ)の物語です。久蔵は、物語の初めから登場し、「女高師」のミステリーとも絶妙に絡みつつ、別の物語をも紡ぎ出します。
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