二〇一七年に、『明治乙女物語』は松本清張賞を受賞したわけですが、このときの選考委員は、葉室麟(はむろりん)さん、石田衣良さん、角田光代さん、三浦しをんさん、私の五人でした。圧倒的な票が集まり、誰の文句もなく受賞が決まったように記憶しています。そしてもしかしたら当然といえば当然のことですが、女性選考委員三人の評価が、非常に高かったのです。この小説は、作品そのものが女性たちへの応援歌であり、わたしたちはみんな、このひたむきな登場人物たちをそれこそ端役に至るまで応援したくなり、学校生活に戻ったような楽しさを味わい、はたまたうっかりすると自分の人生の中で直面したあれこれなども思い出し、気がつくと泣かされていたりしたわけです。
明治になって、女子教育の道が開かれたけれど、世間の目は教育を受ける若い女子にちっとも温かくない、というのがストーリーの背景にあります。そんな中で、「女高師」の生徒たちは自分の手で自立の道をつかもうとしています。女の子たちだけの学園の中では、バットを握ってボールをかっ飛ばすこともしますし、原書で英語の小説や哲学書を読み、シャーロック・ホームズばりの捜査と推理を展開することもします。でも、彼女たちはみんな、世間の冷たい視線に抗いながら日々を過ごしているのです。だから、学園の友人たちは同志であり、姉妹でもある。そんな彼女たちの絆に、強く心を揺さぶられる思いがします。
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