書評

アラフォーのねじれたヒロイン像が新鮮! 重めのドロドロ系小説の入門編

文: 東村アキコ (漫画家)

『ペット・ショップ・ストーリー』(林真理子 著)

『ペット・ショップ・ストーリー』(林真理子 著)

 本書は二〇〇五年に出版された文庫本を『ペット・ショップ・ストーリー』のタイトルで復活させたものである。十一篇の短篇が収められていて、もっとも古い作品の初出は二十年以上前に遡るという。全体に暗い話が多いが、私はこういうドロドロ系の小説が大好きだ。それは私が四十三歳という、主人公たちの年齢に近いせいもあるだろう。人生の折り返し点にさしかかり、現実はけっこうショボいことになっているのに、女の部分は生々しく残り、本人はまだまだイケると思っている。そのせめぎ合いから生まれる嫉妬や不安、憎悪といった負の感情に林先生は容赦なくそっと光を当てる。登場人物にのめり込まず、少し距離を置いて俯瞰(ふかん)で描いているのも素敵だ。漫画家にも主人公に自分を重ねて描くのめり込み型と、突き放し型がいるが、私は先生と同じで後者のタイプだ。そのほうが自由で、面白い物語が生まれるのではないだろうか。

ペット・ショップ・ストーリー林 真理子

定価:本体660円+税発売日:2019年06月06日


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