野原を駆けまわって遊んでいる子どもたちや、かつてそんな子どもだった大人たちの多くは、原っぱで捕まえたカマキリを闘わせて遊んだ経験があることだろう。ちいさな鎌で思い切り指を挟まれ、予想外に“痛い”思いをした覚えのある人も多いのではないか。
そんな“虫あそび大好き”な少年少女、紳士淑女たちのあいだで、大きな話題を呼んでいる長編小説がある。
荻原浩さんの新刊『楽園の真下』だ。
物語の主人公は、巨大カマキリと、寄生虫ハリガネムシ。
どこにでもいるカマキリが、数十センチ、あるいはそれ以上に巨大化して人間を襲ってきたら、いったいどうなるだろう。ウネウネうごめく無数の寄生虫が、これまた大挙して人間社会をおびやかしたとしたら、どんなにかキモチワルイことだろう――。
そうした想像力を縦横に疾走させた一冊。それが『楽園の真下』なのだ。
「人間くさい」カマキリの仕草
舞台は、本土から船で19時間かかる「志手島」。
コーラルブルーの海、亜熱帯の深い森をもつ楽園の島で、17センチの巨大カマキリが発見された。『びっくりな動物大図鑑』を執筆中だったフリーライターの藤間が、取材のため島を訪れるところから物語の幕は開く。
荻原さんに執筆の動機を尋ねると、少し考えた末、「思いついてしまったんです」と語った。
「庭で野菜づくりするのが好きなので、ふだんからよく虫を見かけます。害虫なんてプチッと潰してしまったりするんですけど、ふと、この力関係が逆転したらどうなるんだろうなどと、埒もないことを妄想することがあります。昆虫が巨大化したらさぞ恐ろしいことだろうな、どれくらい巨大化したらどれくらい怖いだろうなんて、折にふれて想像をふくらませていました。そしたら――」
思いついてしまったのだという。
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