世界唯一の”寄生虫”専門博物館である「目黒寄生虫館」。珍しい寄生虫の生態が学べる場として、はたまたディープな観光スポットとして、小中学生、カップル、外国人旅行客など多くの方が訪れている。8月10日(金)、その初代館長である亀谷了さんのエッセイ『寄生虫館物語』がカラー写真満載で電子書籍化。電子化を記念して、プライベートで寄生虫館を訪れたこともある“寄生虫好き”南海キャンディーズ・しずちゃんに、寄生虫館の楽しみ方をガイドしてもらった。
相方の「腹の虫」とご対面
目黒寄生虫館に足を踏み入れたしずちゃんは、寄生された動物の内臓や頭部の標本の数々を落ち着いた様子で見て回る。もともと虫は嫌いではないそうだ。
「虫にはあまり抵抗がないですね。特に寄生虫はふだん目に見えない分、貴重な感じがする。ホラー映画も好きなので、こういう展示を見るのは平気ですね」
実は、しずちゃんが寄生虫館に訪れたのはこの日が初めてではない。
「昔から寄生虫館のことは気になっていて、この近くに引っ越した時に、『行かなあかんやろ』と思って来ました。でも結構前だったから、今見ると覚えていないことも多くて新鮮ですね。寄生虫ってこんなにいっぱい種類があって、あらゆる生き物に寄生するんだ。やっぱ面白いなあ」
そんな彼女がひときわ興味を示したのが、昨年、相方の山里さんを襲った寄生虫「アニサキス」の標本。サバ、イワシなどの魚介類に寄生し、刺身など生食の形で人間の体内に侵入すると、食中毒を引き起こすことがある。
「山ちゃんがアニサキス胃腸炎になった時は、急に体調が悪くなったということだけ当時のマネージャーから聞いていたから、普通の食中毒かなと思っていました。ネットニュースを見て初めて、『ああそうやったんや』と知ったんです。でも復活も早かったから、お見舞いのメッセージも送ってなかったですね(笑)」
ちなみに、山ちゃんはしずちゃんと違って大の虫嫌いだとか。
「寄生された本人なんだから、寄生虫館に来て勉強した方が良いと思うんだけど、山ちゃんグロテスクなもの嫌いだから、来ないだろうな……」
それでは、寄生虫館をおすすめするとしたら誰にするのだろうか。
「鳥居みゆきさんですね。鳥居さん、寄生虫すごい好きなんですよ。この前初めて一緒にごはんを食べに行ったんですけど、食事中、寄生虫の動画を延々と見せられました。猫の顔に寄生してる虫を、ニキビみたいに「ブチュー」って押して「スポーン!」って出す動画(笑)。虫自体は気持ち悪いんですけど、その一連の流れは毛穴から汚れを出すみたいな爽快さがあって、気持ちワル・気持ちイイ感じです。鳥居さん、もしまだここに来てなかったらおすすめしたいです」
今後、目黒寄生虫館に足を運んだら「鳥居さんとばったり遭遇」なんてこともあるかもしれない。
寄生虫館に迷惑をかけたサナダムシダイエットの噂
次にしずちゃんの目を引いたのはサナダムシの展示。標本の隣には、実際に人の中で成長したサナダムシの体長と同じ長さの紐が。紐を手にとったしずちゃんは「コレが人の体の中にあったんや」と、その長さを実感。
「少し前に、海外のセレブはサナダムシを体内にすまわせてダイエットしているってことを聞きました。当時は『ラクして痩せられる』みたいな噂が流れていて、いいなあと思っていましたけど」
「いや、それで当館にも問い合わせが相次いだんですよ」と語るのは亀谷了さんの孫であり、現在「公益財団法人 目黒寄生虫館」の事務長を務める亀谷誓一さん。
「寄生虫館が建て直された九〇年代にもその噂はありました。当館が知られるようになってから、『ダイエットしたいからサナダムシが欲しい』という電話がかなりあったと聞きます。近年では流石に減りましたが、年に数件は質問を受けます。そのときは研究員が専門的な立場から『サナダムシダイエットは噂に過ぎず、医学的にはサナダムシの寄生は百害あって一利なしと考えられているので、試してみようなどとは考えないで欲しい』と伝えています」
「そうなんですか。たしかに体の中に他の生物がいることは嬉しくないですよね」と納得するしずちゃん。しかし、話は思いもよらぬ方向へ。
「『寄生獣』(右腕を正体不明の生物・ミギーに寄生された主人公の戦いを描くSFマンガ)みたいに、寄生虫によって特殊な能力が生まれるんだったらいいんですけどね! 実際に体内にミギーみたいなのがいて、良い感じに使いこなすことができたら、かっこよくないですか?」
仮に謎の生物に寄生されるとしたら、どんな能力がほしいのだろうか?
「何やろ。自分の普段の仕事とか考えると、歌が上手くなる、とかですかね? 寄生したら面白くなる、とかもいいかも。そうなると、脳に寄生されるのかな。自分の脳みそを良い感じに突いてくれる寄生虫、いたらいいんですけどね」
絶妙なタイミングで現実的になるしずちゃん。しかし、彼女の突飛な発想はさらに続く。
しずちゃんが寄生先として選んだ「宿主」は……?
「寄生虫ってずる賢いと思います。何かに寄生するっていう感覚、自分にはないんですよね。私やったらむしろ寄生されたいかなあ。何なら自分の栄養も多少分けてあげたい(笑)」
自立して抱擁力のあるタイプ、ということかも。あえて、寄生するなら誰がいいのか聞いてみると。
「難しいですね。綺麗な女優さんとかも考えたんですけど、やっぱり、自分が尊敬する人がいいかもしれない。そうなると、『ジョジョの奇妙な冒険』の荒木飛呂彦先生かな。荒木先生が何を考えて、普段何をしているのか覗いていたいです。
……もし、自分にすごく好きな人ができたら、その人を動かしている血になるのもいいかもしれないですね。あ! 普段からこういうこと考えてるわけじゃなくて、寄生虫の話しててポッと思い浮かんだだけですから(笑)」
独特の感性で“寄生”トークを繰り広げるしずちゃん。読者がついて来られなくなる前に、この辺りで終わっておこう。
「ここは来てみるまでわからないところ」
昨年、目黒寄生虫館はメディア露出が増えたこともあり、来館者数は大幅に増加した。
「去年四月に『Qさま!!』(テレビ朝日)で取り上げられたことと、その翌月のゴールデンウィークの来館者数が急増したのは何かしら関係があると思います。その後、アニサキス被害のニュースが連日報じられるようになると、今度はテレビへの画像提供依頼が増えました。それでさらに認知度と寄生虫館への興味が高まったのでしょうか。昨年度の来館者数は約五万七三〇〇人、一日平均二二四名にまで伸びたんですよ」と亀谷さんは話す。
博物館としてはもちろん、「デートスポット」としても有名な寄生虫館。しずちゃんは寄生虫館デートに肯定的だ。
「寄生虫館デート、良いと思いますね。二人とも興味があるのかな? それとも、お化け屋敷みたいに『キャー』ってくっつくのが目的の人もいるのかな。いずれにせよ、寄生虫館は来てみないとわからないところですよね。展示物を見たら本当に衝撃を受けるので、興味がある方は一回足を踏み入れてみてほしいです」
しずちゃんも太鼓判を押す目黒寄生虫館。一人で寄生虫たちと向き合うのも良いし、誰かと感想を共有しながら見て回るのも楽しい。奥深い寄生虫の世界の入り口は常に開いている。
目黒寄生虫館公式サイト
https://www.kiseichu.org/
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