特集

対談 私たちのファーストクラッシュ #2<特集 恋愛に必要な知恵はすべて山田詠美から学んだ>

文: 山田詠美,ジェーン・スー

文學界11月号

<<#1よりつづく

小説の言葉のマジック

 ジェーン 私はミネソタの大学に留学していたことがあるんです。当時、アフリカン・アメリカンの男性と付き合っていたのは完全に山田さんの影響だと思います。

 山田 そうなんだ! その人、今どうしてるかね。

 ジェーン 今は子供が四人いるみたいですね。なにしろFacebookという鬼門のおかげでそういう現況が全部わかってしまうという。

 山田 うわぁ。私なんて、別れた男はみんなパラグアイだかウルグアイだかのアスンシオンというところにいることになってるの。そこは日本から公共の乗り物を使って行ける場所の中でいちばん遠いところだから、もう会うこともない(笑)。そこでタコスかなんかの屋台の太ったおばちゃんと結婚してるよ、お幸せに~とか思ってさ。

 ジェーン なるほど。自分からいちばん遠いところに住まわせるんですね(笑)。

ままならぬことが世の中にはあることを山田さんの小説から教わった(ジェーン氏)

 山田さんの恋愛小説って、自分が経験したことがないことばかり書かれているからこそ、強烈に惹かれるんですよ。でも、いきなり実践で役に立つかといったら、そうではない(笑)。むしろ失敗してからはじめて理解できるという。

 山田 私が初めてサガンを読んだときもそうだった。『悲しみよこんにちは』の中に、別荘の階段のところに座って朝食代わりにオレンジをかじるシーンがあるの。私、それにすごく憧れちゃって。自分も階段のところでオレンジを食べるんだ!って思うんだけど、当時の日本にはみかんしかない(笑)。「それで、しかたなしにみかん食べたんだよ」って言ったら、別な女性作家も同じことをやったって言うんだよ。

文學界 11月号

2019年11月号 / 10月7日発売
詳しくはこちら>>

ファースト クラッシュ山田詠美

定価:本体1,500円+税発売日:2019年10月30日

ぼくは勉強ができない山田詠美

定価:本体430円+税発売日:2015年05月08日

トラッシュ山田詠美

発売日:2008年04月20日


 こちらもおすすめ
イベント『ファースト クラッシュ』刊行記念 山田詠美さんサイン会(大阪・名古屋・東京)(2019.10.29)
インタビューほか〈特集〉デビュー二十周年 山田詠美の世界 私が惹かれる男のたたずまい(2005.05.20)
書評スーさんの魔法の筆から繰り出される言葉の数々に、してやられる快感(2018.11.28)
特集花見の宴の謎あるいは人生は面白いという命題からいかにしてアイロニーを払拭するか(2019.10.15)
特集縄文論(2019.10.22)
特集「地下鉄サリン事件」以降の村上春樹――メタファー装置としての長篇小説(前篇)(2019.10.29)