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対談 私たちのファーストクラッシュ #3<特集 恋愛に必要な知恵はすべて山田詠美から学んだ>

文: 山田詠美,ジェーン・スー

文學界11月号

<<#2よりつづく

『ファースト クラッシュ』(山田詠美 著)

不適切だからこそ役に立つ

 ジェーン 音楽や映画の世界では「作品と作者は別ものと捉えた方がいいのではないか」という考え方が少しずつ浸透してきたと思うんですが、書くものに関して言えば、PC的なものは引き続き強く求められているような気がします。「いま、なにをどう書くの?」と。

 山田 そのまま作者を反映していると思われがちだしね。

 ジェーン 昔のことを掘り返して申し訳ないんですが、山田さんがアメリカ人男性とお付き合いしていたとき、マスコミにいろいろ騒がれましたよね。山田さんではなく、その方の話がスポーツ紙に載ったりして。作品自体と関係ないところでギャーギャー言われる状況を見て、ものすごく変だなと思ったことを覚えています。

 山田 私が直木賞を受賞したときなんて、「あなたは大和撫子という言葉を知ってますか」という手紙が何通か来たもん。黒ん坊の情婦は死ね、とか。

 ジェーン えーっ! 酷い。まあでも、嫉妬もあるんだろうな。自分の国の女だからって自分たちのものじゃないという、腹立たしくも純然たる事実を突きつけられたような気持ちになったというか。

 山田 そう。特に私のことをいろいろ書きたてたり悪口言ったりした人たちって、団塊の世代と呼ばれる人たちが多かったんだけど、同じ世代なのにヒッピーって呼ばれている人たちはみんな私のことを好きだったのよ(笑)。だから年代じゃないんだよね。社会的にカテゴライズされてしまった何かに囚われている人たちなんだと思う。

 ジェーン 社会規範から逸脱している人を許せない人が、昔も今も多いんでしょうね。

 でも、そんなふうにスキャンダラスに書きたてられた山田さんの作品が、今となっては学校の教科書に載っている。自分の手柄でもないのにニヤニヤしますね。

文學界 11月号

2019年11月号 / 10月7日発売
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ファースト クラッシュ山田詠美

定価:本体1,500円+税発売日:2019年10月30日

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