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結婚式、直木賞受賞、そして『東京會舘とわたし』。ミステリーのように不思議なご縁で導かれた大好きな場所

結婚式、直木賞受賞、そして『東京會舘とわたし』。ミステリーのように不思議なご縁で導かれた大好きな場所

辻村 深月

『東京會舘とわたし』文庫化記念トークイベント


ジャンル : #エンタメ・ミステリ

マロンシャンテリーの感激から「ドレスを着せる」と言う表現が生まれた

初めての週刊誌連載で、しかも大正時代という、それほど遠くない昔の話を書くということにはプレッシャーもありました。そういう時にも會舘の人たちがもっていた時間の流れの感覚にとても助けられました。今の建物は三代目、私が取材していた時の建物は二代目ですが、初代の建物を知っている方を従業員の中から探してくださって「今の建物に使われているこのタイルが、昔は玄関に使われていたんですよ」などと教えていただきました。

週刊誌連載は、一体誰が読んでくれているのだろうかと不安に襲われることもあったのですが、「東京會舘とわたし」に関しては、會舘の皆さんが読んでくださっていて、バーにうかがうと「今週、バーが出てきましたね」と声をかけてくださったり、お菓子の工場に見学にうかがったら、休憩室に連載している「サンデー毎日」が5、6冊置いてあって、皆さんで読んでいただいていると聞いたりしてとても嬉しかったです。

白い生クリームの「ドレスを着せた」マロンシャンテリー

會舘の厨房にうかがった時に、黄色い栗のクリームが載った美しいお菓子がずらっと並んでいて、「モンブランもあるんですね」と何気なく言ったら「これはお化粧前なんですよ」というお返事にびっくりしました。つまり、このモンブランのような形を白い生クリームで綺麗に覆ったのが、皆さんが先ほど召し上がったマロンシャンテリーなんです。外からは見えない中身もこんなに綺麗なお菓子なんだと感激して、作中の「ドレスを着せる」という表現が生まれました。

美味しいもののエピソードは数え切れません。コンソメスープも革命的な美味しさで、まさにコンソメスープのパラダイムシフト(笑)!とにかくこのスープを自分の大好きな人たちに食べてもらいたい!というのが東京會舘で結婚式を行う決め手の一つでした。八章に登場する〈舌平目の洋酒蒸(ボン・ファム)〉、こちらはきのこが苦手な私が、世界で一つだけ食べられるきのこ料理です(笑)。しかも何年経っても、その味が舌に蘇える。これってすごいことですよね。

文春文庫
東京會舘とわたし 上 旧館
辻村深月

定価:803円(税込)発売日:2019年09月03日

文春文庫
東京會舘とわたし 下 新館
辻村深月

定価:803円(税込)発売日:2019年09月03日

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