- 2019.11.11
- インタビュー・対談
ビジネスとして、副業として、まじめに「殺し」を考える──石持浅海『殺し屋』シリーズ
「オール讀物」編集部
『殺し屋、やってます。』『殺し屋、続けてます。』
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
ゴルゴ13とは正反対の主人公に
着想のきっかけを著者の石持さんに聞くと、
「いつも新作を書くときに考えるのが、ミステリーの『お約束』をいったん外してみようということです。このシリーズでまず考えたのは、主人公を、探偵役として想像されうる職業からおよそもっとも遠い職業にしてみたいということ。そこで『副業・殺し屋』のアイデアを思いつきました。
次に、殺し屋が解くべき謎って何だろうと考えました。読者がイメージするものから最大限、離れた謎を彼に解かせてみたいと思ったのです。殺し屋ですから、毎回、富澤は殺害の依頼を受けます。殺害依頼という大事なら必然的に謎をともなうはず、と誰もが考えるでしょうけど、実はそこに謎はない。まったく違うところで彼に『日常の謎』を解かせたら面白いはずだと。つまり、探偵役=殺し屋というミスマッチと、殺し屋と日常の謎という組み合わせのミスマッチを同時に狙ったのが発想のきっかけでした」
先行作品で特に参考にした「殺し屋」キャラはいないと語る石持さんだが、富澤を「ゴルゴ13と正反対のキャラにしよう」とは意識したという。
「多くの人が『殺し屋』と聞いてイメージするのはゴルゴ13でしょう。だから彼とはまったく違う、読者にうんと近い性格の主人公にしようと心がけました」
ゴルゴ13と富澤でいちばん違うのは“殺し方”だという。
「ゴルゴ13といえば神業のような遠距離狙撃が有名ですが、富澤は普通のビジネスマンです。短時間で確実に遂行できる殺害方法は何かと考えると、必然的に、標的に接近して刃物を用いるやり方になる。毒殺のように確実性のない方法はビジネスとして採りえませんし、絞殺も死ぬまで時間がかかりすぎます。近づいて刃物で刺す。これが富澤の基本スタイルになりました。普通のビジネスマンの副業が、たまたま殺し屋だった――そういう『お仕事小説』の感覚をとりいれたことが、このシリーズのポイントかもしれません」
-
『赤毛のアン論』松本侑子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/20~2024/11/28 賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。