「会社ぐるみではなく、担当者の独断だった」
責任逃れの発言に終始する会見がほとんどだったが、そこで「知らなかった」と断言した社長が後に逮捕されたケースも少なくない。
総会屋のからんだ大型事件の摘発が相次いだ1990年代は、バブルが崩壊して日本経済が転落していった時期だ。バブル崩壊で狂った歯車の回転に歯止めがかからず、様々な負の遺産が、数年後に事件として一斉に噴出してきた格好だ。つまり、総会屋の栄枯盛衰はバブル景気に浮かれて沈んだ日本経済の軌跡とぴったり重なるのだ。総会屋は企業とともにバブルの絶頂を謳歌し、バブルが崩壊すると衰退に向かい、日本経済が長期不況に沈むとともに消滅していった。
バブルの崩壊過程や当時の経済事件について振り返る著作は数多くあるが、意外なことに総会屋からの視点で焦点を当てたものは、ほとんどない。多くの総会屋を取材した経験から、彼らの目を通してバブルが崩壊していくさまを裏側からとらえなおすことができるのではないか。
そう考えて、総会屋という“時代の徒花”の記録を綴ってみると、同時にそれは、自らの責任を果たすことなく問題を先送りにして、総会屋に振り回されてきた企業経営者たちの姿を描くことでもあった。
尾島正洋(おじま まさひろ)
ノンフィクションライター。1966年生まれ、埼玉県出身。早稲田大学政経学部卒業後、1992年、産経新聞社に入社。警察庁記者クラブ、警視庁キャップ、神奈川県警キャップ、司法記者クラブ、国税庁記者クラブなどを担当し、主に社会部で事件の取材を続けてきた。2019年3月末に退社し、フリーに。
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