インタビューほか

安倍政権を倒せるのは、もはやこの男しかいない

常井 健一

中村喜四郎──25年の沈黙を破って伝説の男がついにすべてを語った!

『無敗の男 中村喜四郎 全告白』(常井 健一 著)

 中村は、ともに自民党の参院議員を務めた父と母を持つ。日本大学法学部を卒業した後に田中角栄事務所に入り、二十七歳の時に故郷の旧衆院茨城三区から初当選を果たした。その後、一九八七年に自民党田中派が分裂すると「経世会(竹下派)」の結成に参加し、若くして派閥の事務局長に上り詰めた。翌八九年(平成元年)には、四十歳の若さで初入閣(宇野宗佑内閣の科学技術庁長官)。「戦後生まれ初の閣僚」となった。

 同じ派閥の小沢が自民党幹事長だった頃には、選挙対策を担当する党の総務局長を務め、一九九二年には宮沢改造内閣の建設大臣に抜擢される。若くして二度の大臣を経験した中村は、その前後から莫大な公共事業予算を動かす「建設族のプリンス」としても頭角を現していた。平成初期に隆盛を極めた経世会の中では小沢の「次」を担う「将来の総理候補」と目された。

 ところが、一九九四年、ゼネコン汚職事件に絡み、あっせん収賄罪容疑で逮捕され、自民党離党を余儀なくされた。四十四歳で刑事被告人という、重い十字架を背負ったのである。

 並みの政治家であれば、その時点で、死んだも同然だったろう。しかし、中村の場合、そこから新たな伝説が始まった。

 逮捕前、中村は検察による任意の事情聴取を拒否し続けた。自ら検察庁に出頭し、逮捕されてからは完全黙秘を貫き、並み居るエリート検察官たちを相手に供述調書を一通も作らせなかった。百四十日間の勾留中、自分の名前さえも喋らなかったという逸話は、令和の政界においても語り草になっている。
元外務省主任分析官であり、「国策捜査」による逮捕を経験した作家の佐藤優はある対談本の中で、世に溢れる完全黙秘のドラマの大半が「フィクションだ」と喝破している。

「あなたを男前にしてやる」

 そう言って検察側は、世間向けに「あの人は黙秘を貫いた」という情報を流す。これから罪に問われようとしている有力者からすれば、メンツは守れる。その代わり、検事はすべてを語らせる。「完黙」の裏にはそういうカラクリがあるという。

 しかし、中村は、本当に完黙を貫いてしまった。当時、検察を取材した記者によると、ある検察官は「あれは、男の中の男だな」と漏らしたそうだ。百四十日間に及ぶ勾留中の徹底抗戦は、当時を知る者たちが中村を語る際に欠かすことのできないレジェンドと化している。

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