

もっとも、その訪問はまったくの不意突きという訳ではなく、振り返るに前兆のようなものがあるにはあった。数日前にフェイスブックを開くと、彼から友達申請が届いていたのだ。拒む理由もなくそのまま承認ボタンに触れると、わたしはいつものように三、四日前に開いたときから更新されているフィード上の新たな投稿を精読するでもなく写真と文字とを目で追いかけながら指の腹でスクロールさせていた。ところに彼から早々にもメッセージが届いた。そこにはついいまさっきわたしが承認したことに対する礼と、それに続けて簡単な近況、例えばこのところ仕事が忙しい、たまに東京に出向く機会がある云々が記されていた。わたしはその一週間ほどのあいだに寝かせていた幾つかのメッセージと併せて手早く返信を済ませた。文面の詳細は憶えていない。社交辞令の範疇ではあっただろう。すぐにわたしは先のフィードに戻ってスクロールを再開させた。それが済むと、気まぐれにわたしの指はのっペら坊のようなデフォルトの人物シルエットが張りついたままになっている彼のアイコンをクリックしていた。そこには姓名以外の情報はなく閑散として、ひとつの投稿もみられない。アカウントを開設してまだ日が浅いのだろう。友達の数はわたしを含めて両手の指の数にも満たず、共通の友達はいなかった。
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