「文學界 2月号」(文藝春秋 編)

 町屋 濃い出会いですね。

 瀧井 そうなんです。朝井さんは前から「吉田修一さんみたいな作家になりたい」って言ってませんでした?

 朝井 在り方に憧れています。ジャンルレスで、芥川賞と直木賞の系統、どちらの賞も取られているすごく珍しい方ですよね。恋愛小説、ミステリー、青春、犯罪小説など幅広く書かれているし、『国宝』は大河小説のようでした。次に何を書くのか予想ができない存在感に憧れています。自分自身、どのジャンルに分類されるのか微妙に分からないところがあるので、勝手に吉田さんモデルを目指しています。

 瀧井 好きなように自分の世界を広げているところが憧れると。

 朝井 そうです。予想がつかないんだけど、新刊が出ると、この人の頭の中には今何があるんだろうという興味で手に取ってしまう。ずっと追って、大好きで読み続けています。吉田さんと対談をした時に、恐れ多くも、私の作品を読んで「後輩と感じた」と言ってくださったんです。なので「今後公の場で後輩と名乗っていいですか?」と詰め寄り、同意をもぎ取りました。ほぼカツアゲです。だから私、吉田さんの後輩なんです。正式な。

 瀧井 ご本人からのお墨付き!

 町屋 最高ですね。うらやましい。

 朝井 変装してサイン会に行ったこともあります。

 町屋 えっ、どういう変装ですか。

 朝井 書店回りに何度も行っている書店が会場だったので、一応メガネにニット帽にマスク装着で、為書も本名にしたんです。でも、吉田さん、私の本名を書きながら「もしかして……朝井さんですか?」って! 絶対分からないと思っていたのに! それが初対面ですね。

 瀧井 それも衝撃的ですね。町屋さんも吉田さんに会ったことはありますよね?

文學界 2月号

2020年2月号 / 1月7日発売
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