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誌上読書会 朝井リョウ×瀧井朝世×町屋良平 人からあふれ出すもの──『青春』を読む <特集 吉田修一という多面体>

誌上読書会 朝井リョウ×瀧井朝世×町屋良平 人からあふれ出すもの──『青春』を読む <特集 吉田修一という多面体>

文:朝井リョウ ,文:瀧井朝世 ,文:町屋良平

文學界2月号

出典 : #文學界

「文學界 2月号」(文藝春秋 編)

 町屋 芥川賞の記者会見と贈呈式の時にお会いしました。贈呈式での選考委員のスピーチが吉田さんだったんです。こんなに人気でベテランの作家さんなのに、ものすごくシャイというか、小説家だなあという感じの印象を受けました。

 若い時から断続的に吉田さんの作品を愛読してきたんですけど、一番思い出深いのは『悪人』です。面白くて電車を乗り過ごした体験はたぶんあの本が最後。一番好きなのは『横道世之介』です。あと、「パレード」を読んだ時に、自分はこんな小説は絶対書けないと思ったのがすごく印象に残ってます。

 朝井 町屋さんの作品を拝読し、こういう小説を書く人は吉田さんのどのタイプの作品が好きなんだろうと思っていたのですが、『横道世之介』が一番っていうのが少し意外でした。吉田さんの中でも結構開かれている感じの作品ですよね。

 町屋 確かに。映画もすごく面白くて興奮しました。小説を忠実に映画化して成功していた印象でしたね。

 朝井 小説に対する愛を感じる映画化でしたよね。

 私は『国宝』で地の文を改革していたのが本当に驚きました。登場人物の誰でもない、すべてを見てきた大きな屋久杉みたいな何かが読者に語りかけている感じ。地の文を変える試みを、キャリア20年目でやる体力が本当にすごいなと思いました。できることをやっていっても、読まれ続ける方じゃないですか。でも、書いたことのない世界を長く取材される知的体力も健在。読む度に落ち込んじゃいますね。

 町屋 分かります。吉田さんは発想が全く途切れないですよね。自分も玉石混交とはいえ毎日新しいアイデアが浮かぶような時期はあったんですけど、それは若さゆえのもので、30代となるとそういうことはなくなりました。吉田さんは発想が止まらない人なのではないかと何を読んでいても思います。


瀧井朝世(たきい・あさよ)
一九七〇年生まれ。作家インタビュー、書評、対談企画を多数手掛ける。二〇〇九年~一三年にTBS系「王様のブランチ」ブックコーナーに出演。現在は同コーナーのブレーンを務める。BUKATSUDO「贅沢な読書会」モデレーター。著書に『偏愛読書トライアングル』『あの人とあの本の話』。

町屋良平(まちや・りょうへい)
一九八三年生まれ。二〇一六年「青が破れる」で文藝賞を受賞し、デビュー。一九年「1R1分34秒」で芥川賞受賞。他の著書に『しき』、『ぼくはきっとやさしい』、『愛が嫌い』、『ショパンゾンビ・コンテスタント』がある。

朝井リョウ(あさい・りょう)
一九八九年生まれ。二〇〇九年『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。一一年『チア男子!!』で高校生が選ぶ天竜文学賞、一三年『何者』で直木賞、 一四年『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞を受賞。ほか『スペードの3』『武道館』『世にも奇妙な君物語』『死にがいを求めて生きているの』『どうしても生きてる』など著書多数。

 

この続きは、「文學界」2月号に全文掲載されています。

文學界 2月号

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