夫婦。家族。この二人が作り上げた世界は、そんな言葉にはおさまらない。でも、じゃあ何かといえば、やっぱりどうしようもなく夫婦であり家族である。それらの言葉の広大さを、私はこの一冊に教わった。
この文章を書くにあたって、高橋順子さんの詩集『さくら さくらん』を読んだ。小説家である夫が亡くなる前、それから亡くなったあとにも書かれた詩がおさめられている。ここにもやっぱり、この詩人特有の言葉で切り取られた、広々と安らかな世界の断片が散らばっている。その世界から、ひとりがだんだん姿を消していく。消えたひとりは、でも、空洞となって残る。空洞とともに詩人は歩いていく。静謐な光に満ちた世界を歩いていく。その残像がいつまでも消えない。この詩集を読めてよかった。夫亡きあともこの夫婦の姿を見ることができてよかった。
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