- 2020.02.27
- インタビュー・対談
<安部龍太郎インタビュー>戦国時代を知るためには、新たな歴史観が必要だ!
第二文藝部
作家生活30周年記念作品『海の十字架』(安部 龍太郎)
ジャンル :
#歴史・時代小説
「日本版シルバーラッシュ」が、戦国時代の合戦を変えた!
「当時、灰吹法という精錬技術が朝鮮半島から導入され、石見銀山の産出量が激増しました。アメリカのゴールドラッシュならぬ、『日本版シルバーラッシュ』の状況です。
この銀に目を付けたのが、ポルトガルです。
当時のカトリック世界の考えは『キリスト教の布教』『植民地の拡大』『経済的利益』。この三位一体。彼らは、物価の安い極東の日本から銀を買い付けるために、鉄砲を売りつけることにした。その仲介役がイエズス会だったんです。
現在のコピー機の販売とトナーの関係ではないですが、鉄砲を売れば売るほど、火薬と玉も売れる。
火薬の原料となる硝石や、玉の原料となる鉛は、ポルトガルの支配下にある東南アジアから調達できますから、戦国大名が鉄砲を使えば使うほど、ポルトガルの利益は増えていったのです。
ではなぜ伝来したのが種子島だったのか。火薬を作るためには木炭と硝石、硫黄が必要です。ポルトガル人には優良な硫黄を手に入れるルートだけがなかった。そして、薩南諸島北部の硫黄島で、優良な硫黄が産出されることを知ったポルトガル人は、東南アジア、硫黄島の中継地としての種子島に目を付けた。種子島は、いわゆる『鉄砲プラント』の設置場所として最適だったのです」
表題作である第1話「海の十字架」の主人公、大村純忠は、日本初のキリシタン大名となった人物である。元は有馬家からの養子であり、大村家内で自らの基盤を確立する必要があった。
純忠は、ポルトガルの大型帆船「ナウ」を目の当たりにし、「まるで海に浮かぶ要塞だ」と衝撃を受ける。
このときに、西洋文化を拒絶するのではなく、宣教師らと会い、開港をめぐる交渉を進めて、佐賀の龍造寺家に対抗できる力を蓄えていくのだった。
純忠が、洗礼を受ける前夜の葛藤も興味深い。