
まえがき
金吾でGO! 万城目学

私が辰野金吾という建築家を知ったのは、『プリンセス・トヨトミ』の連載をしながら、この荒唐無稽極まりない話に、どうそれっぽい説得力をつけるべきか悩んでいる最中のことでありました。
藤森照信氏の『建築探偵』シリーズを何とはなしに眺めていると、建築音痴の私でもその名前や外見を知っている建物の設計者として、やたらと同じ人物の名前を目にする。そこから辰野金吾という名前を覚え、「辰野式」と呼ばれる赤レンガの建物群を覚え、最終的にストーリーの中にねじこむことに成功したわけですが、あれからざっと12年が経ち、ずいぶんと世間で辰野金吾という名前を目にする機会も多くなったように感じます。
それはひとえに東京駅の改修工事が終了し、この大建築を設計した人物として再脚光を浴びているがゆえでありますが、すでに10年前の時点で、『ぼくらの近代建築デラックス!』企画を始めるにあたり、大阪に残る辰野建築からその第一歩をしるした我々は、きわめて先見の明があったと言わざるを得ないでしょう。
そんな二人が、改めて辰野金吾の足跡を、オリンピック開催を前に妙にうわついている東京の中に探って参りました。立派に残っているもの、完全に消え去ったもの、建物はなくても不思議な気配を漂わせているもの――。今も東京に生きる、様々な辰野金吾のかたちをご覧ください。
それでは「辰野金吾建築散歩in東京」のはじまり、はじまり。
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