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万城目学と門井慶喜の「辰野金吾建築散歩」in東京

万城目学と門井慶喜の「辰野金吾建築散歩」in東京

「オール讀物」編集部

ふたりの建築探偵が大建築家の足跡をぶらぶら歩く!

出典 : #オール讀物
ジャンル : #歴史・時代小説

(1)工部大学校【ボアンヴィル/1877年/千代田区霞が関3-2-1】(現存せず)

『東京、はじまる』(門井慶喜)
『ぼくらの近代建築デラックス!』(万城目学 門井慶喜)

万城目 素敵な近代建築を見上げ、毎度「すごい」で終わってしまう僕の隣で、人知れず小説を仕上げる野心を磨いていた門井さん。建築家ヴォーリズについての物語、『屋根をかける人』(角川文庫)を書かれたときは、「え、いつの間に!」と驚嘆したものですが、何とこのたび、また新たな作品を上梓されるそうで。

門井 はい、『東京、はじまる』という題名で、辰野金吾の小説を書きました(文藝春秋より好評発売中)。明治維新をきっかけにして、それまでの「江戸」が「東京」へと変わっていくさまを、建物の面、都市空間の面から金吾に託して考えたかったんです。

万城目 辰野金吾といえば、2010年から門井さんとまわってきた近代建築散歩(共著『ぼくらの近代建築デラックス!』文春文庫)の主役でもあります。今回、辰野を軸に据えて、あらためて東京を歩いてみようということで、虎ノ門に集合したわけですけど……。

門井 虎ノ門の交差点付近、文部科学省の真横に「工部大学校阯」の碑が残っているんですね。金吾は、安政元(1854)年、肥前国唐津藩の武士の家に生まれますが、武士といっても最下級、半分は農業みたいな貧しい暮らしだったそうです。やがて叔父の養子に入り辰野姓となった金吾は、苦学して上京し、二十歳で工学寮(工部大学校の前身)に入りまして……

虎ノ門のビル群の谷間にひっそり残る工部大学校址

万城目 おお、出会うなりさっそくの門井節(笑)。金吾とファーストネームで呼ぶところに、想いの熱さを感じます。

門井 あ、たしかに(笑)。まあ、若き日の金吾が青雲の志を抱いて学んだ場所を見てみようということで、この工部大学校址を本日の出発地点に選びました。

万城目 工部大学校は江戸城の外堀のすぐ内側、まさにお堀端につくられた学校ですが、碑のすぐ近くに江戸城の石垣の一部がまだ残っています。さらに必見なのは、地下鉄の入口を入ってすぐ(東京メトロ「虎ノ門駅」11番出口)に「江戸城外堀跡」の展示があり、当時のこのへんの様子がよくわかるんですよ。明治十(1877)年、工部大学校ができた頃には外堀は埋められてなかったので、学生たちは水をたたえたお堀を見下ろしながら勉強に励んだのだろうし、お堀の向こうには江戸八百八町の町並みがまだ残っていた。さぞ絶景だったでしょうね。

「江戸城外堀跡」の展示を見入るふたり
江戸城外堀の石垣がまだ残る
単行本
東京、はじまる
門井慶喜

定価:1,980円(税込)発売日:2020年02月24日

文春文庫
ぼくらの近代建築デラックス!
万城目学 門井慶喜

定価:869円(税込)発売日:2015年05月08日

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