建築技術に関するエピソードや、高橋是清、川田小一郎はじめ周辺人物の描写も豊富だ。
なかでも注目したいのが、辰野の一番のライバル・曾禰達蔵(そねたつぞう)との関係性である。
曾禰は辰野よりも先に工部大学校に合格、しかも首席で合格したエリートだ。さらに、金吾とは同郷だが、彼が下級藩士の息子であるのに対し、曾禰は最上級。
辰野は曾禰に対し、建築家としてのライバル意識はもちろんのこと、“育ちの差”に対しても並々ならぬ感情を抱いている。
「ある人物の能力の高さについて語る際、私たちはある時は『育ちが違うから』と語り、ある時は『育ちなんて関係ない、努力の結果だ』などと語ってしまいます。本来、人の能力というものは、そう簡単に判断できるものではないのですが、つい二者択一の問題で考えてしまう。それほど私たちは、先天的と後天的ということについて悩んでるんですね。金吾もきっと、そのひとりであったのでしょう。曾禰の存在によって、金吾の感情がどれほど揺れていたのかも読みどころです」
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