さらに東京拘置所という、佐藤氏に言わせると「読書に適した」場所に長期間拘束されることによって、彼の教養は磨かれ、深まりました。
拘置所という特殊な空間での読書は、快適な別荘とは異なり、ある種の切迫感があったのではないでしょうか。そこには「いずれ来る死を前に何ができるのか」という自らへの問いかけもあったのではないかと私は見ています。
私は佐藤氏より10歳年上であることから、より死を身近に感じる立場にいます。身体の寿命は長くなっても、知的活動ができる健康寿命には限りがあります。それまでの間に何ができるのか。そんな問題意識を持って佐藤氏と対談してきました。
佐藤氏の話はしばしば脱線。外務省の裏話や安倍政権の内幕にテーマが及びましたが、その見方もまた、勉強になるものでした。なるほど、世の中はこのように見ることができるのだ、と。
そんな観察力、分析力を身につけることができたのも、氏が凄絶な経験をして、“生きるために”学習を続けてきたからでしょう。
対談の始めにお互いが一致したのは、45歳が人生の折り返し地点だということでした。そこまでに何ができるのか。その年齢から何をすべきなのか。自分たちの経験(私の場合は反省ですが)を踏まえて長時間に渡り語り合いました。この対談自体が、自分にとっての知的再武装でした。あなたの知的再武装に少しでもお役に立つことを願っています。
2020年1月 池上 彰
(「はじめに」より)
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