「まさかのラスト」「想像や好奇心の翼が広げられていく」今村夏子さんの最新刊に寄せられた全国の書店員さんからの熱いメッセージ。後編は大阪~九州の書店から
未来屋書店りんくう泉南店 水本啓太さん
亜沙の人生で誰かに自分の手で食べさせたいという気持ちが木になった時に叶ってよかったという安堵感、木になりわりばしへと姿を変えてからまきおこる周囲の様子にハラハラとさせられました。最後の若者とモノの結末には、「愛」を感じられました。
平和書店TSUTAYAアルプラザ城陽店 奥田真弓さん
クセになる不穏な空気。少しおかしさのある1人語りが、一転妙にホラーがかった話になるところ、後味が悪いような、むしろ良いような説明づらさが、また夏子節。おかっぱ頭だった小学生の頃、顔にかかる髪をひと束、口にくわえて(めっちゃおこられましたけど。一人になるとやっていた。)ザリザリとした触感を楽しんでいた、あの感じを思い出しました。
ジュンク堂書店滋賀草津店 山中真理さん
今村夏子さんの何度もくり返し少しの変化を加えながらされる叫び、狂おしい切実な想いに打ちのめされてしまいました。この叫びは自分の内面を刃でつらぬくようで、今まで歩んできた人生を思い起こさせて、苦しく悲しすぎました。何か人のためになりたい、人に見てもらいたいという気持ちが宙に浮いて、誰からもうけとってもらえない、キャッチボールができない。一方通行。良かれと思ったことが、すべて観点のずれがあって、すれ違いうまく前に進めない。そう、そんなこと今まで何度もあったし、これからもある悲しい、悲しい、苦しい、苦しい。コンビニのわりばしになって若者と出会った亜沙。自分を包み込んでもらえる存在に出会えた。あー良かった。この幸せがずっと続きますように。自分がまるでわりばしにのりうつったかのようで、必死で祈りました。香織、智花、裕太、自分だけじゃない、自分の居場所を必死で求めてすがりつこうとしているものは。しかし、ラストのこの悲しさ。これは何でしょう。このどうしようもない悲しさ。この気持ち。必死ですがりついていたものが消えてしまう。諸行無常。ラストの辛さ、苦しさが美しいと思える自分の心にもとまどいも覚えています。悲しすぎる美しさというか。“若者とはなればなれになるくらいなら死んだ方がましだ”この言葉がずっと心に住みついています。一番大切なものを失うこと、それは、死より死を越えたものなのでしょうか。そうかもしれません。でも助けたい。助けたかった。この作品を読み終わって心の中は静かに感情が入り乱れて収拾つかず、うずまいてます。この余韻に自分のこれからがかかっているような気持ちがしています。ものすごい作品を読ませていただきありがとうございました。この作品を多くの方に何としても届けたいと思いました。今村夏子さんの書かれる余韻が本当に泣きたいほど好きです。書かれなかった部分が心につきささります。(長文で申し訳ございません。)
勝木書店本店 樋口麻衣さん
童話のような読み心地、なんとなく感じる不穏な雰囲気、やがて訪れる幸せな時間、たしかにこれは愛の物語だと感じたところで突然のあのラストシーン。どれもこれも今村夏子さんにしか書けないワールドだと思います。最後のシーンで今村さんが何を描いたのか、これはきっと読む人によってとらえ方が様々ありそうな作品です。