「 悲しい、とも、かわいそうとも違う読後感」「危険度は底なし」今村夏子さんの最新刊に寄せられた全国の書店員さんからの熱いメッセージ。北海道から順にご紹介
喜久屋書店帯広店 礒野あかねさん
短編とは思えぬ程のインパクトをうけました。思ってもみない流れと結末! 完ぺきな1編の小説です。差しのべた手(物)をうけとってほしい。差しのべた手(物)を受けとってくれる人のいるよろこび。愛はエゴだとつくづく思う。シルヴァスタインの『おおきな木』を思い出した。私には『木になった亜沙』のほうが1枚上手だと感じる!
成田本店みなと高台店 櫻井美怜さん
決して明るい話ではない。けれど、辛くて悲しいからといって泣くような話でもない。最初から最後までそこはかとなくただよう物悲しさに、だんだん胃がキリキリとしてくるが、耐えられないほどではない。なのに、それなのに私の胃の両端を持って、雑巾をひねるように締めあげてくるあのラスト!! 初めて、初めて今村夏子に裏切られたと思った。今村夏子はすごいと、そんな当たり前のことを呆けたままでしばらくぶつぶつと言い続けた。
蔦屋書店盛岡店 佐々木さん
思いもよらない視点で描かれているので、ハッとさせられました。自分を分かってもらえない、認めてもらえない閉塞感を持っている人に対して「私はこうありたい」という思いと、それを分かってくれる人(どんな形であれ)と出会えることの幸せ。でもその人たちの理解者も社会的に認められづらい存在であることが、なんとももどかしい…です。彼らにとって安住の地はどこにあるんだろう…
紀伊國屋書店仙台店 斎藤一弥さん
自分が手にしたもの、作ったものを誰にも食べてもらえない亜沙の悲しみは想像以上のものでしょう。特に低学年頃の体験はトラウマになってしまうのではないでしょうか。「手がきれいすぎるから」これは本心から出た言葉なのか、誤魔化すための言葉だったのか。そしてやっと巡り会えた食べてくれる人。まさに運命の出会い! そんな人と引き裂かれるなんて……うん。ここまで振り返ってみると、確かに完全に愛の物語だ。シンデレラや、白雪姫と比べても遜色ない。これは子どもたちの方が的確な感想を言えるのではないか?!
鹿島ブックセンター 八巻明日香さん
とても静かな、そして幸せな作品だと感じました。読んでいる間は周りのどんな音も耳に入らないくらい、作品の世界にどっぷりと引きこまれ、読み終わった後はその余韻で「ほう」と溜息を吐くばかり。いつも忙しく働いている人たちにこそ、この静かな愛の物語を読んで欲しいと思います。
岩瀬書店富久山店 吉田彩乃さん
想像のはるか上をいく内容と結末に終始驚きの連続でしたが、これは本当に今村夏子という作家にしか描けない、不器用すぎて切なすぎる「愛」の物語だ!と納得しました。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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