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三國連太郎が恐れていた晩年

三國連太郎が恐れていた晩年

宇都宮 直子

『三國連太郎、彷徨う魂へ』(宇都宮 直子)


ジャンル : #ノンフィクション

『三國連太郎、彷徨う魂へ』(宇都宮 直子)

 私は普段、いろんな人に会い、さまざまな場所に行く。だが、ほとんどの場合、その場以上のつきあいにはならない。そう心がけているせいもあるが、かなりの人見知りだからだ。ともあれ、それを機に、私は夫人と挨拶を交わすようになり、一緒に撮影の様子を見るようになった。

 三國さんと初めて言葉を交わしたのは、撮影所の中にある食堂だった。三國さんはお化けのようなメイクをしていた。

 とくに人見知りでない人でも、「三國連太郎」との食事は緊張するのではないか。私はひどく無口になった。言えたのは「こんにちは。初めまして」くらいだ。

 気を遣ってくれたのか、三國さんが言った。

「この顔はメイクをしていまして、普段はこうではありません」

「それはそうよねえ」

 夫人は笑ったが、私は笑えなかった。苦しまぎれに、咳をした。

単行本
三國連太郎、彷徨う魂へ
宇都宮直子

定価:1,760円(税込)発売日:2020年04月08日

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  • 『赤毛のアン論』松本侑子・著

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