インタビューほか

<対談>森見登美彦×深緑野分「空想対談 虚空に城をなす」

別冊文藝春秋

電子版31号

<対談>森見登美彦×深緑野分「空想対談 虚空に城をなす」

「いちおう私は、自分をファンタジーを書く人間であると思っている」そう語る作家の森見登美彦さんと、自他ともに認める空想家・深緑野分さんの初対談。

 とめどなくあふれるイマジネーションがいかに二人を刺激し、書くこと、読むこと両面でゆたかな体験を呼び覚ましているのか。空想に耽るよろこびと、物語が生まれるその瞬間のことを語っていただきました。

(司会・構成:瀧井朝世)


乙女の目を通せば京都の町がキラキラ見えるだろうと

――今日は「創作と想像力」というテーマでお話をうかがいます。まず、昨年、深緑さんはツイッターで森見さんの『熱帯』を絶賛されていましたよね。しかも、お二人が会う機会もあったとか。

森見 はい。『熱帯』が出た時に大阪の万博記念公園にある国立民族学博物館で西尾哲夫先生と対談イベントをやったんですけれど、その時に深緑さんが聴きに来てくれて。

深緑 私、普通に応募して行ったんです。文春の担当さんに「何やってるんですか」って言われました(笑)。私は皆さんと同じく、森見さんのめちゃファンなんです。『四畳半神話大系』を最初に読んで、『夜は短し歩けよ乙女』とか『恋文の技術』とかが好きで。

森見 ありがとうございます。深緑さんは第二次大戦とかの小説を書かれていて、ごついイメージもあったのに、イベントの前にはじめてお会いしたら柔らかい雰囲気で「あれ? この人なの?」と不思議な感じがしました。その時はドラマの話を一生懸命しましたね。

深緑 そうでした。

森見 僕が小学生の時にNHKで「ストーリーテラー」というアメリカのドラマが放送されていたんです。深緑さんにお会いしてはじめて、僕以外に「ストーリーテラー」の存在を知っている人に会ったんです。その話で盛り上がりました。お会いするのは今日が2回目ですね。

――さっそくですが、お二人が小説を書く時の出発点について教えてください。

森見 その時々によって変わります。ただ、日常的な世界じゃなくて、そこからちょっと歪んだ、特殊な世界が想像できたら、書けるだろう、となりますね。リアルな日常の世界をそのまま書こうとしても書けないんです。『ペンギン・ハイウェイ』だったら、アオヤマ君という特殊なキャラクターの目を通すと、郊外の住宅地の風景がすごく特殊な世界に見える。『夜は短し歩けよ乙女』なら、なんでも好意的に考えて、世界を肯定的に見ている乙女の目を通せば、京都の町がキラキラして虹色みたいに見えるだろうと思えたんです。

 でも事前に、こういう世界で、こういうストーリーで、こういう人物だからとか考えすぎると書けなくなります。僕の想像力はあんまり几帳面になりすぎると働かないらしく、とにかく制限がないほうがよくて、大まかにここからここまでの範囲というのだけ与えられてその中は自由に走れる、みたいな形式がいいんです。このコースを走ってください、って言われると駄目なんです。

別冊文藝春秋からうまれた本

別冊文藝春秋 電子版31号(2020年5月号)文藝春秋・編

発売日:2020年04月20日

熱帯森見登美彦

定価:本体1,700円+税発売日:2018年11月16日