本の話

読者と作家を結ぶリボンのようなウェブメディア

キーワードで探す 閉じる
「無理難題が多すぎる」この時代に……“毒にも薬にもならない本”が注目されたワケ

「無理難題が多すぎる」この時代に……“毒にも薬にもならない本”が注目されたワケ

文:伊藤 秀倫

土屋賢二さんの『無理難題が多すぎる』が本屋大賞「超発掘本!」に輝いた

出典 : #週刊文春
ジャンル : #ノンフィクション

“毒にも薬にもならない”の言葉に著者は……

 ちなみに山口さんが土屋さんの著書を手にとったのは、これが初めてだったという。

「私の本はだいたい、皆さん、書店で一度は手にとられるんですが、そのままソッと戻されるパターンが多いんですよねぇ」と笑うのは、ほかならぬ土屋さんだ。

「そもそも“発掘”されるには、埋もれてなきゃなりません。その点、この本も私のほかの本と同じく発売と同時に埋もれてしまったんですが、これに目をつけてくださった山口さんの慧眼と見識に敬服するばかりです」(同前)

“毒にも薬にもならない”という推薦の言葉について尋ねると、実に嬉しそうに「わが意を得たり、ですね」と語る土屋さん。

「20年以上も書いていると、ときにはつい有益なことを書きたくなることもあります。

 でも、そこでグッと我慢するわけです(笑)。ガラじゃないですし、そうでなくとも、世の中にはすでに有益な本があふれているわけですから。今後も、精進して、毒にも薬にもならないことを書いていきたいと思います」

“発掘劇”の裏にあった秘話

 ところで、今回の“発掘劇”には、ちょっとした秘話がある。山口さんが明かす。

「実はこの本、最初に読んだ後、ウチの中で行方不明になってしまったんです。“どこいっちゃったんだろう”と、ずっと探していたんですが、どうしても見つからなくて……」

©伊藤昭子

 いつしか本のことを忘れかけたころ、旅行鞄の中からひょっこり出てきたという。

「旅先にも持って行って読んで、そのままに……土屋先生、すいません!」(同前)

 名著は、どこに埋もれていても、何度でも掘り出されるのである。たぶん。

こちらの記事が掲載されている週刊文春 2020年4月23日号

2020年4月23日号 / 4月16日発売 / 定価440円(本体400円)
詳しくはこちら>>

文春文庫
無理難題が多すぎる
土屋賢二

定価:693円(税込)発売日:2016年09月02日

文春文庫
日々是口実
土屋賢二

定価:693円(税込)発売日:2020年02月05日

文春文庫
そしてだれも信じなくなった
土屋賢二

定価:693円(税込)発売日:2018年11月09日

文春文庫
年はとるな
土屋賢二

定価:693円(税込)発売日:2017年10月06日

文春文庫
不良妻権
土屋賢二

定価:594円(税込)発売日:2015年09月02日

プレゼント
  • 『赤毛のアン論』松本侑子・著

    ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。

    応募期間 2024/11/20~2024/11/28
    賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様

    ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。

ページの先頭へ戻る