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「無理難題が多すぎる」この時代に……“毒にも薬にもならない本”が注目されたワケ

「無理難題が多すぎる」この時代に……“毒にも薬にもならない本”が注目されたワケ

文:伊藤 秀倫

土屋賢二さんの『無理難題が多すぎる』が本屋大賞「超発掘本!」に輝いた

出典 : #週刊文春
ジャンル : #ノンフィクション

“毒にも薬にもならない”の言葉に著者は……

 ちなみに山口さんが土屋さんの著書を手にとったのは、これが初めてだったという。

「私の本はだいたい、皆さん、書店で一度は手にとられるんですが、そのままソッと戻されるパターンが多いんですよねぇ」と笑うのは、ほかならぬ土屋さんだ。

「そもそも“発掘”されるには、埋もれてなきゃなりません。その点、この本も私のほかの本と同じく発売と同時に埋もれてしまったんですが、これに目をつけてくださった山口さんの慧眼と見識に敬服するばかりです」(同前)

“毒にも薬にもならない”という推薦の言葉について尋ねると、実に嬉しそうに「わが意を得たり、ですね」と語る土屋さん。

「20年以上も書いていると、ときにはつい有益なことを書きたくなることもあります。

 でも、そこでグッと我慢するわけです(笑)。ガラじゃないですし、そうでなくとも、世の中にはすでに有益な本があふれているわけですから。今後も、精進して、毒にも薬にもならないことを書いていきたいと思います」

“発掘劇”の裏にあった秘話

 ところで、今回の“発掘劇”には、ちょっとした秘話がある。山口さんが明かす。

「実はこの本、最初に読んだ後、ウチの中で行方不明になってしまったんです。“どこいっちゃったんだろう”と、ずっと探していたんですが、どうしても見つからなくて……」

©伊藤昭子

 いつしか本のことを忘れかけたころ、旅行鞄の中からひょっこり出てきたという。

「旅先にも持って行って読んで、そのままに……土屋先生、すいません!」(同前)

 名著は、どこに埋もれていても、何度でも掘り出されるのである。たぶん。

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