- 2018.11.29
- 書評
ツチヤ先生とタワシ
文:荒井泰子 (大人と子供のための読みきかせの会ピアニスト)
『そしてだれも信じなくなった』(土屋賢二 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
土屋先生の文章との衝撃の出会いからはや17年。初めて先生の文章を読んだのがまるで17年前のようです。それなのに、読み始めてから17年経ったのかもしれません。……ツチヤ菌に感染すると、このように、書く文章が恥ずかしいほどヘンになり、顔から火を噴きそうです。穴があったので入ろうとしたら、逃げられました。土屋先生が先に入っていらしたに違いありません。今後の上品な生活のため(書く文章を「恥ずかしいほどヘン」から「フツーにヘン」にまで昇格させるため)ツチヤ菌に対抗するには「タメになる」ものを読めばいいと思い至り、「今日のお料理」や「明日のお天気」を毎日読んでツチヤ菌を徐々に不活化させながら平和で上品な日常を送っていたところ、突然先生から解説のご依頼のメールが届きました。先生らしい間の悪さに感動すら覚えると同時に喜びに打ち震えました。こんなに名誉なことがあるでしょうか? 憧れのツチヤ本解説のご依頼を賜った日に、なんとサッカーW杯で日本がコロンビアに勝ったのです。「自信がないとお思いかもしれませんが、写真もスリーサイズも出しませんから心配いりません」とのお言葉に、「写真もスリーサイズも出さないのなら自信がありません」とお断りしようと思ったのですが、しつこく潜伏していたツチヤ菌がまた繁殖しだしたのでしょう、こうしてパソコンの前に座っています。そう、ただ座っているだけです。パソコンのキーボードを食べることも、ましてや浅草でサンバを踊ることもなく。文才の無い私に果たしてツチヤ本の解説など書けるでしょうか? 育児書は書いたことが無いのです。ただ、私には文才はありませんが、顔は大きいです。土屋先生にそれが私の最大の長所だとホメられたことがあります。だから自信を持って、自分にできることを考えました。