
私にとって、工藤會の壊滅を本気で志すきっかけとなった事件がある。
平成十五年八月に北九州市小倉北区の繁華街にある「倶楽部ぼおるど」で発生したクラブ襲撃事件だ。実行犯の工藤會系組員が投げ込んだ手榴弾によって、店で働いていた女性たち十二名が重軽傷を負った。
ぼおるどは大手企業がよく利用する格式あるクラブで、当時としては珍しく暴力団員の出入りを禁止していた。このため、前年の四月には工藤會系組幹部らが営業中の同店に糞尿をばらまくという威力業務妨害事件を起こし、クラブ襲撃事件の三か月前には、ぼおるどの店長が深夜帰宅中に立ち寄ったコンビニ店の駐車場で、男から刃物で斬りつけられる殺人未遂事件も発生し、工藤會、または他の暴力団関係の両面で捜査を進めているところだった。
私は店に到着して現場を検分した。手榴弾の爆風によって、ソファがひっくり返り、トイレの小便器が粉々になり、壁紙で塞がれていた窓はガラスが外に砕け散っていた。その威力のすさまじさには驚いたが、後日、手榴弾は不完全爆発だったことがわかった。完全爆発だったら、確実に死者が出ていただろう。工藤會を壊滅しなければ、再びこのような事件が起きる──。私は工藤會壊滅に本気で取り組むことを決意した。
このような一般人までも標的とする容赦のない暴力を背景に、工藤會は北九州の利権をわがものとしていった。
建設業界に睨みを利かせ、大型工事の受注額の一~五%が入る仕組みを作り上げていた。関係を断とうとしたゼネコンの事務所には銃弾が撃ち込まれ、建設会社の経営者は射殺された。
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