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二〇一九年十一月十四日 木曜日
君はこんな夢を見ている。
柔らかいハンチングを頭にかぶって、よれよれの白い衣服を痩せたその身に着け、独特の薄暗さの中を他の集団と一緒に歩いているのだ。
夕方なのだろうが街灯はついていない。モノクロフィルムのぬめぬめした色の表面に自分が溶かし込まれている感じがする。
幅の狭い道の両側を見ると、そこはおそらく盛り場らしく、並ぶ古着屋の店先には汚れで黒ずんだ服がどっさり積まれたり、軒に掛かっていたりしている。そのいくつかが人民服であることに君は虚を突かれた。いつの時代かはわからないが、君は中国にいるらしい。それもそこそこ内陸の方だ。
周囲にいる不定形な姿の男たちが映画人であることはうすうすわかっていて、彼らフレームの細い丸眼鏡の男たちが、三十半ばと思われる女を店の前の板の上にふわりと転がし、派手な古着のドレスを彼女自ら仰向けのままおかしな動きで着る様子を手帳にメモったり八ミリらしきカメラで撮ったりしている。
それが果たして衣装合わせなのか撮影場所の確認なのかわからないながら、君は自分もうなずいたりしていなければじきに面倒なことになるかもしれないと怯えてもいる。
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