清原が怖れているのは自分自身だった。
「だから、もうちょっと執行猶予を延ばしてくれへんかなと……」
相変わらず薬物への欲求を捨てきることができず、夜とともに眠ることができず、太陽とともに一日をはじめることもできない。
そんな自分の弱さを怖れている。
客観的に、外から見れば清原は劇的に再生している。
4年前、留置場から出てきたばかりの廃人のようだったころと比べれば、他人と目線を合わせられるようになり、胸の内を言葉にできるようになった。何よりもかつてのように笑えるようになった。
ただ、その変化を本人はそれほど自覚できずにいる。
自分が立ち上がったと信じきれずにいる。
そこにこの病の本質が見える。
「薬物依存との戦いというのは……、ぼくはもう本当にギリギリのところでやってきたので……。たとえば著名人の方が薬物使用で逮捕されるとニュースになりますよね。その人が10年やめていた人だったりすると、ええっ、10年もやめられていたのにそれでもまた使ってしまうのかって……。絶望的な気持ちになるんです。そういう人はけっこう多いですし、何回も捕まる人だっているじゃないですか。すごく苦しい思いや辛い思いもしたはずなのに、それでもやってしまう……。ああ、怖ろしいなあと」
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