「負ける時は上位陣に後手番で負けているケースが多いですからね。弱点がどうのと言えるものではなくて、確率論的なものとしか思えないです。上位陣を相手に後手番で7割くらい勝っちゃうと、通算勝率は必ず8割を超えていきます。8割超えをずっと維持していたら全冠制覇のレベルになっちゃいますから。一〇番指せば二番くらいは負けますよ」
進撃の渦中において、朝日杯将棋オープン戦決勝の広瀬章人八段戦での▲4四桂、竜王戦5組決勝の石田直裕五段戦での△7七同飛成など、後世に語り継がれるような一手を早くも生み出している。
「▲4四桂は、何分か考えれば浮かぶ可能性も十分にある一手だと思いますけど、△7七同飛成は正直すごかったですね。考えても浮かばないかもしれないし、浮かんでもリスクが高すぎて実際には指せないかもしれない」
渡辺は弱冠20歳の時に棋界最高位の竜王に就いている。その後、14年間にわたってタイトルホルダーで在り続け、歴代5位のタイトル獲得通算20期を誇る。時代の頂点を走ってきた者として、藤井の現時点での立ち位置をどう見ているのか。既に先頭集団の一員として並走しているのか、あるいは追走する第2集団なのか。
「今、タイトル戦に出てもおかしくない棋士は30人くらいいます。当然、藤井君も間違いなく入っていますけど、羽生さんくらいの領域に行くには30人を一気になぎ倒すくらいの強さが必要ですからね。まだ、そこまでは行ってないです。逆に30人の間には大きな差はなくて、半年周期ぐらいで30人の中での評価は変わっていくものなんですよ」
2年前は実現しなかった“直接対決”
1年前、スポーツ誌「Number」の掲載記事であることを意識してくれた渡辺は、 当時ルーキーの藤井を「高卒1年目で打率3割、本塁打30本のレベル」と評した。今、 2年目のシーズンも後半に入ったと考えると、どのような例えが成立するのだろうか。
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